白血病は急激な臨床経過をとる急性白血病と,ゆっくりと進む慢性白血病に分類される。いずれも骨髄中の血液細胞の遺伝子異常が原因でおきる造血器悪性腫瘍である。 体内の白血病細胞数表2-6 おもな急性白血病の病型と治療6 ● 血液・造血器疾患患者の看護1.反復性遺伝子異常を伴うAML A)t(8;21)を伴うAML B)inv(16)またはt(16;16)を伴うAML C)PML-RARAを伴う急性前骨髄球性白血病 D)t(9;11)を伴うAML E)t(6;9)を伴うAML F)inv(3)またはt(3;3)を伴うAML G)t(1;21)を伴うAML(巨核芽球性) 暫定疾患)BCR-ABL1を伴うAML H)NPM1遺伝子変異を伴うAML I )CEBPA遺伝子両アレル変異を伴うAML 暫定疾患)RUNX1遺伝子変異を伴うAML10 ● 脳・神経疾患患者の看護図2-4 囊状動脈瘤と解離性動脈瘤図2-4 囊状動脈瘤と解離性図2-11 ステントによる血栓の除去図2-11 ステントによる血栓の除去8 ● 血液・造血器疾患患者の看護第2章 おもな疾患 ● 5血流亀裂血管壁の亀裂から中膜の間に血流が流れ込み,動脈瘤が形成される。b.解離性動脈瘤前大脳動脈中大脳動脈好発部位ウィリス動脈輪後交通動脈前半(85%)後半(15%)椎骨動脈寛解後療法寛解導入療法地固め療法1012109106治療経過図2-5 白血病細胞の根絶(Total cell kill)治療薬病型急性骨髄性白血病イダルビシン塩酸塩,シタラビン急性前骨髄球性白血病トレチノイン(ビタミンA誘導体)急性リンパ性白血病備考再発・難治例には造血幹細胞移植再発・難治例には三酸化ヒ素(亜ヒ酸)フィラデルフィア染色体陽性例は予後不良で,イマチニブの併用と造血幹細胞移植を検討ドキソルビシン塩酸塩,ビンクリスチン硫酸塩,プレドニゾロン,L-アスパラギナーゼ1) ブリナツモマブは,腫瘍細胞をこわすT細胞を芽球に近づけるはたらきをもつ。維持療法再発再発血液学的完全寛解分子生物学的完全寛解治癒鉄剤の投与は無効である。腎性貧血には,エリスロポエチン製剤を皮下投与するか,経口の低酸素誘導因子プロリン水酸酵素(HIF-PH)阻害薬を処方する。 急性白血病は,急性骨髄性白血病(AML 1))と急性リンパ芽球性白血病(ALL 2))に分けられる。急性リンパ芽球性白血病は,急性リンパ性白血病ともよばれる。AMLとALLの分類について,表2-4,2-5にまとめた。 原因と発症部位● 動脈は通常,内膜・中膜・外膜の3層で構成されており,内膜と中膜の間には内弾性版という薄い膜が存在する。囊状動脈瘤では組織学的にこの内弾性板が欠如しており,強度が弱くなっていることが多い。囊状動脈瘤はこの部分が,高血圧や血流の影響でしだいに風船状にふくらんだものである(図2-4-a)。 囊状動脈瘤の発症部位は約85%が脳主幹動脈(具体的にはウィリス動脈輪前半部)の血管分岐部である。とくに前交通動脈,内頸動脈後交通動脈分岐部,中大脳動脈分岐部に多い(図2-5)。脳主幹動脈は脳底部のクモ膜下腔を走行しているので,この部位に発生した動脈瘤が破裂し出血すると,脳底部からクモ膜下腔全体に出血が広がっていくことになる.そのため,出血後可能な場合に適応がある。 また,近年では,脳血管内治療によりカテーテルで閉塞血管の血栓を除去して血流を再開させるという方法が登場している。この方法ではまず,CTやMRIによって,ペナンブラ領域とよばれる,血流が低下しているが脳細胞の損傷をまだおこしていない部分を診断する。この診断により,救える脳領域が多いことが判明した場合は,積極的に血管内の血栓を除去し血流を再討する。 染色体転座t(15;17)をもつ急性骨髄性白血病に対しては,全トランス型レチノイン酸all-trans retinoic acid(ATRA)と亜ヒ酸が有効である。ATRAと亜ヒ酸による治療では,白血病細胞が急速に成熟するため,これにより急性呼吸不全,急性腎不全,体重増加などの分化症候群を合併することがある。検査● ペルオキシダーゼ反応陽性となる骨髄中の芽球が3%未満の場合は,急性リンパ芽球性白血病と診断する。急性リンパ芽球性白血病の20%はフィラデルフィア染色体( ●●ページ,図2-6)が陽性で,予後不良である。治療● 化学療法(表2-6)による寛解導入療法を行う。再発例に対しては,抗体医薬品であるブリナツモマブ 1)による免疫療法が有効である。また,若年 1 急性白血病 B 白血病表2-4 急性骨髄性白血病(AML)のWHO分類(2017)2.骨髄異形成関連の変化を伴うAML3.治療関連骨髄性腫瘍4.AML,非特異的 A)未分化AML B)成熟傾向を伴わないAML C)成熟傾向を伴うAML D)急性骨髄単球性白血病 E)急性単球性白血病 F)急性赤白血病 G)急性巨核芽球性白血病 H)急性好塩基球性白血病 I )骨髄線維化を伴う急性汎骨髄症5.ダウン症候群に関連した骨髄増殖症表2-5 急性リンパ芽球性白血病/リンパ芽球性リンパ腫(ALL/LBL)のWHO分類(2017)1.Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫(B-ALL/LBL),非特異的2.反復性遺伝子異常を伴うBリンパ芽球性白血病/リンパ腫(B-ALL/LBL)3.Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL/LBL)4.NK細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫(NK-ALL/LBL)1) AML:acute myeloid leukemiaの略。2) ALL:acute lymphoblastic leukemiaの略。3) 過酸化水素分解酵素のミエロペルオキシダーゼ(MPO)が触媒する反応の産物による染色。MPOは骨髄系細胞に存在し,リンパ球系細胞には存在しないことから,両者を判別する。内弾性板外膜 中膜 内膜囊状動脈瘤では内弾性板が欠如していることが多い。a.囊状動脈瘤前交通動脈内頸動脈上小脳動脈前下小脳動脈後下小脳動脈後大脳動脈脳底動脈図2-5 脳動脈瘤の好発部位a.CT画像b.MRI拡散強調画像梗塞巣は,CT画像では低吸収域として黒く見え,MRI拡散強調画像では高信号域として白く見える。図2-10 脳梗塞のCT画像とMRI拡散強調画像 2 急性リンパ芽球性白血病(ALL)27疾患理解を促す解剖生理や病態生理などのイラスト・表を多数掲載しています
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