章1第3第法守A健康とは1健康の定義B看護職の活動に必要な衛生法A法とはなにか章1看護関係の法律を学ぶに2健康のさまざまなかたち1主観的健康感憲法,第13条憲法,第25条健康,スピリチュアルな143おおやけじゅんしゅまもせい4保健医療福祉のしくみ足が不自由というほかは苦痛もなく,楽しくお花見もできる。私は健康でよかった! 主観的に健康と認識a.…………………………………………………………………………………………………………………1)アメリカのアラメダ研究による。アラメダ研究は,ブレスローの7つの習慣などで有名な研究である。144看護と法律憲法法律お花見なのに足が不自由でほかの人のように散歩することができないよ。健康ならばよかったのに…。 主観的に不健康と認識b.国の命令内閣政令地方公共団体の命令大臣府令・省令・地方議会条例人事院など規則地方公共団体の長規則 人は誰しも,健康な生活を送りたいと望んでいる。疾病や障害で痛みや苦しみを背負って生きていくのではなく,できる限り苦痛のない,快適で健康な生活を望む。しかし,あらためて「健康とはなにか」を問うと,「病気がないこと」「いきいきと暮らしていること」「快食・快眠・快便」……などと,人それぞれの答えが返ってくる。 このように,健康の概念はさまざまであるが,世界保健機関(WHO1))の憲章の前文は,健康について次のように定義している。「健康とは,ただ疾病や虚弱がないだけでなく,身体的,精神的ならびに社会的に完全に良好な状態である」 つまり,健康とは単に「病気(疾病)などがない」というレベルだけではなく,身体も良好な状態であり,精神的にも満たされており,社会的な存在としても不平等や不利益のない,「完全にすぐれてよい状態」とされている。 WHOの1999(平成11)年の総会では,これに「スピリチュアルspiritualな健康」と「ダイナミックdynamicな状態」という言葉を加えることが提案されたが,結論は出ていない。「spiritualな健康」をどうとらえるかはやや議論のあるところであり,「霊的な健康」と訳す人もいる。ただ,霊的な健康といっても具体的にはよくわからないので,「いきいきと生きている状態」というとらえ方もある。もっと意訳すれば,「地域やコミュニティのなかで前向きに自分らしく生きていること」とも考えることができる。人と社会 人間は単独では生活することができない。なんらかのかたちで社会を形成し,社会の中で生活を営んでいる。社会の中で人々が共同で生活するためには,一定の決まりを設け,お互いにこれをまもることが必要である。この決まりが規範・ルールといわれるもので,道徳や宗教・慣習などもある。これすることが強制されるものを法らの規範のうち,国家の権力によって遵という。この法によって人々の行動は制約を受けるが,基本的人権や生活がまもられ,援助が必要なときは公 法にはいろいろな種類がある。まず最高法規としての憲法がある。その下にある法律は,国民としてまもらなければならない決まりを文章にしたものであり,唯一の立法機関である国会において審議のうえ制定される。衆議院と参議院の2院制をとっているわが国では,法律が成立するためには原則として両院で可決されなければならない。 立法・行政・司法の三権分立のわが国では,法律を実施するのは内閣などの行政機関の役割である。そのために行政機関では法律に基づいてさらに細かい内容の規定をつくる。これを命令という。内閣が制定する命令を政令,各省大臣が制定する命令を省令(内閣総理大臣が制定するものは内閣府令)という。その他,人事院や会計検査院などの長が制定する命令を規則という。 都道府県・市町村などの地方公共団体は,国の法律や命令に違反しない範囲で,議会が条例を制定し,知事や市町村長が行政事務を処理するために規則を制定する。 法令とは,国の最も重要な根本法である憲法や法律を中心にして,それを実施するための細目を決めた政令・省令・規則・条例などをいう(図1―1)。法規ということもある。命令地方公共団体法令の機関が支援をすることになる。 WHOは健康をかなり理想的な状態としてとらえているが,私たちが実際に健康と感じるのは,完全に良好な状態にあるかないかよりも,自分で健康と思っているかどうかによって左右されるだろう。 たとえば,歩行に障害をかかえた高齢者がいて,近所の子どもたちに囲まれながら,車椅子に乗って楽しく花見をしていたとする。もし高齢者が「足が不自由というほかはとくに苦痛もなく,こうして楽しく花見もできるし,私は健康である」と認識していれば,そのような健康も存在する。 他人が客観的にみた評価ではなく,自主的な判断で健康を自己評価することを主観的健康感とよび,健康のあり方として重視する考え方がある(図1―1)。自分の状態を「とても健康」と評価する人は,「健康ではない」と評価する人に比べてその後の死亡率が低い,という追跡調査の結果があり,主観的健康感が人間の寿命や健康に影響を与えていることを示唆している。 また,地域やさまざまなコミュニティとのつながりがある人(ネットワークをもつ人)は,そのようなつながりがない人よりも死亡率や寝たきりになる率が低い,という調査結果もある1)。これは,気のおけない仲間たちと楽しくいきいきと生きることが,健康にとってプラスであることを示唆している。 この主観的健康感は,人の考え方や生き方とも密接にかかわるものであり,後述する「健康寿命」の1つの指標にもなっている。主観的健康感図1―1 主観的健康感の例図1―1 法令の構造概要 日本国憲法は,第13条ですべて国民は,個人として尊重されるとうたい,さらに第25条では第1項ですべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する,第2項で国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないとしている。 健康な生活を営むことは国民すべてがもつ基本的権利であり,国はその責任において,国民の健康で文化的な最低限度の生活を生活保護制度で保障し,さらに公衆衛生の向上・増進のために必要な措置をとらなければならない。 保健師助産師看護師法などを衛生法という。国が公衆衛生の向上のために保健衛生分野の行政施策を進める目的で制定した法の総称である。 衛生とは生考え方があるが,通常行われている次の5つに分けて説明する。 ①医事法 国民の医療を確保するため,看護師・医師などの医療関係者の資格や業務と病院など医療施設の設備や運営などを規定することを目的にする法律のグループ ②保健衛生法 国民に対して一般的に健康の保持・増進をはかることを目的とする法律のグループ ③予防衛生法 特定の感染症を予防することを目的とする法律のグループ ④薬務法 医薬品・医療機器など衛生上規制が必要な物品の製造・販売などを規制し,薬剤師の資格を定めることを目的とする法律のグループ ⑤環境衛生法 生活環境の維持・改善を目的とする法律のグループ この看護と法律では,准看護師が知っておくべき関係法令として,准看護師を含む看護職の資格制度を定めている保健師助産師看護師法と保健医療施設で活動するために必要な衛生法(表1―1)を中心に,社会福祉や医療保険関係法,労働法,年金関係法,環境保全に関する法などにもふれることにする。衛生法のほとんどは厚生労働省の所管である。衛生法の分類を衛ることである。衛生法の分類の方法について,いろいろなWHOの健康の定義…………………………………………………………………………………………………………………1)WHO:World Health Organizationの略。15健康と保健・医療・福祉あたって毎年改訂を行い、最新の法令・制度の制定・改正を内容に盛り込んでいます
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