1 CH CH2 NH24HO4HO第1章 栄養・食生活と看護●5●医療事故は,アクシデントとインシデントに大別される。アクシデントは,実際に患者に損失を与えた事故である。一方,インシデントは,ある医療行為が,①患者には実施されなかったが,2第 眼231653256鎖さ げ下そ気けや盲●アクシデントとインシデントとの関係性について,一般的に医療事故を含む事故にはハインリッヒの法則がなりたつとされている。ハインリッヒの法則とは,1件の重大事故(アクシデント)の背景には,重大事故にいたらなかった29件の軽微な事故が隠れており,さらにその背後には事故寸前だった300件の異常,いわゆるインシデントが隠れているという事故発生の経験則であり,1:29:300の法則ともよばれる。章医薬品に関する医療事故A医療事故1医療事故と医療過誤α2─交感神経終末α(α1,α2),β(β1,β2,β3)1カテコールアミン2栄養素の摂取状態α2そく●139140●薬理第6章 末梢神経系に作用する薬物●203医療事故の防止は,医療現場の最重要課題である。報道された医療事故をみても,看護師が関与した医薬品の医療事故は,多数を占めている。医療用医薬品は,現在約2万品目あるが,医療機関によっては,そのうちの1割をこえる種類の医薬品を使用していることもある。したがって,医薬品の医療事故はいつでもおこりうる可能性があり,その発生においてはさまざまな要因が考えられる。たとえば,医薬品側の要因としては,同一成分の医薬品で複数の規格があること,薬品名が類似している医薬品があることなどがあげられる。また,バッグ型キット製剤のように取り扱うときに注意しなければならない製剤上の要因もある。看護師側の要因はうっかりミスとしてとらえられやすいが,背景に医薬品および関連事項に対する知識や情報の不足が存在することも多い。あるいは,看護師個人の責任に帰するよりも,組織の管理体制の改善によって再発を抑制できる事故も存在する。このように,医療事故は「人(医療従事者)」,「物(医薬品・医療機器・情報)」,「組織(医療機関の安全体制)」に起因するさまざまな要因が複雑に関連することで発生する。本章では,医療事故・医療過誤について概説したのち,とくに看護師と医薬品のかかわる医療事故とその対策について,要因別に説明する。医療法上,医療事故は「当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し,または起因するものと疑われる死亡または死産であって,当該管理者が当該死亡または死産を予期しなかったもの」とされている。一方で,厚生労働省の「リスクマネジメントスタンダードマニュアル作成指針」では,医療事故を「医療に関わる場所で,医療の全過程において発生す測定し,栄養学の基盤となるエネルギー代謝の概念をつくった。その後,燃焼源となる栄養素として糖質,脂質,タンパク質が発見され,これらはエネルギー産生量が異なり,それぞれに特有な生理作用が存在することがわかった。さらに生体のエネルギー代謝や必要量,非燃焼系の栄養素であるビタミン,ミネラルもつぎつぎに発見されてきた(20ページ)。栄養素の化学構造や生理機能,欠乏症,さらに食品中の含有量,食品の活用法などが研究されて栄養学は体系化された。近年,食物繊維は消化されないが,各種の生理作用があることから,栄養素の一部として考えられるようになった。さらに抗酸化物質のような非栄養素の生理活性物質も栄養学のなかで研究が進んできている。1960年以降,食糧事情の好転により国民の低栄養状態は解決し,その後,過食による肥満が問題となってきた。そして今日の重要な栄養問題は,非感染性慢性疾患である生活習慣病と,若年女子・傷病者・高齢者にみられる栄養不良の治療や予防である。これらはいずれも単なる食べ物の過不足によっておこる栄養問題ではない。るすべての人身事故」であり,「医療従事者の過誤,過失の有無を問わない」としており,以下を含むものとされる。ア)死亡,生命の危険,病状の悪化等の身体的被害及び苦痛,不安等の精神イ)患者が廊下で転倒し,負傷した事例のように,医療行為とは直接関係しウ)患者についてだけでなく,注射針の誤刺のように,医療従事者に被害がまた,医療過誤は,「医療事故の一類型であって,医療従事者が,医療の遂行において,医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為」とされている。一般的に医療現場では,前者の死亡・死産に限られた定義ではなく,後者の定義も含めた広義の意味で医療事故という用語が用いられている。本章でも,この広義の意味における「医薬品に関する医療事故」について説明する。仮に実施されたとすれば,なんらかの被害が予測される場合や,②患者には実施されたが,結果的に被害がなく,またその後の観察も不要であった場合などである。インシデント事例は,患者に被害を及ぼすことはなかったが,日常診療の現場で,「ヒヤリ」としたり,「ハッ」とした経験を有する事例であることから,ヒヤリ・ハット事例ともいわれる。そのため,医療機関においてアクシデントを防止するためには,インシデントの事例をきちんと収集して,分析することが重要となる。インシデント・アクシデントの報告を充実させるためには,過誤や事故を個人の責任にせず,個人をせめないという考え方も重要となる。医療事故が社会問題化した契機の1つに1999年1月にある大学病院におアドレナリン受容体アセチルコリンが結合して作用が発現する受容体は2種類あり,神経節の受容体をニコチン受容体,副交感神経が支配する効果器の受容体をムスカリン受容体という。ノルアドレナリンが結合して作用が発現するアドレナリン受容体は,交感神経の終末と交感神経が支配する効果器にあり,α受容体とβ受容体の2種類に分類される。α受容体にはα1,α2,β受容体にはβ1,β2,β3というサブタイプがある(表6-1)。自律神経支配の効果器は,多くの場合,コリン作動性神経とアドレナリン作動性神経の両方により拮抗的に支配されている。それぞれの神経が支配する効果器の受容体の刺激によって,効果器の反応がおこる。自律神経受容体のおもな刺激効果を表6-2に示す。交感神経作用薬には,交感神経終末や効果器に作用して交感神経の興奮作用を示すアドレナリン作動薬と,交感神経の抑制作用を示す抗アドレナリン作動薬がある。1アドレナリン作動薬アドレナリン作動薬には,アドレナリン受容体(α・β)に直接結合して作用する薬物と,交感神経節後線維(アドレナリン作動性神経)終末に作用して・嚥糧不足による栄養失調とは異なる。食物の不適正な選択,食欲低下,咀嚼機能の低下,消化・吸収能力の低下,外傷や疾患による必要量の増大など,主として生体側の問題が原因となり,栄養不良が出現している。以上のことから,今日の主たる栄養問題を解決するためには,従来の食物栄養学だけではなく,人間側から栄養を考える人間栄養学human nutritionの視点が必要となる。人間におけるエネルギーおよび栄養素の摂取状態は大別すると4つの状態が観察できる(表1-1)。エネルギー・栄養素摂取の不均衡,不足状態が持続すると,身体は栄養の適正な状態から,栄養素がやや不足する潜在性の欠乏状態,さらに著しく不足する欠乏症という病気の状態となる。一方,栄養素の過剰摂取が続くと潜在性の過剰状態がおこり,さらに過剰症が出現することになる(図1-2)。えんかっもう的被害が生じた場合ない場合生じた場合伝達物質のノルアドレナリンの遊離を促進する薬物がある(図6-4)。アドレナリン(エピネフリン)・ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)・イソプレナリン・ドパミン・ドブタミンは,化学構造上,ベンゼン環の3・4を有することか位に−OH基のついたカテコール骨格にアミンを含んだ側ら,カテコールアミンと総称する(図6-5)。これらの薬物は,アドレナリン受容体と直接結合することにより刺激効果を発現する。αおよびβ受容体のそれぞれのサブタイプに対する親和性の程度は,薬物間で違いがある。,夜α1ムスカリンβ1ムスカリンβ2ムスカリンしゃく交感神経効果器ドーパドパミンNA②②NAシナプス間隙①① β効果器NA:ノルアドレナリン①①αカテコール骨格HOノルアドレナリンHOOH4●栄養生活習慣病● 生活習慣病は,長期に及ぶ生活習慣のゆがみにより,代謝に変動がおき,生体がもつ恒常性が維持されなくなったときに発症する。たとえば,過食,脂肪や食塩の過剰摂取,さらに食物繊維の不足などの食習慣が誘因となり,糖尿病,高血圧,脂質異常症などが発症する。そして,これらが危険因子(リスクファクター)となって動脈硬化がおこり,動脈硬化が原因となって脳梗塞や心筋梗塞が発症し,現代人の主たる死因になっている(図1-1)。したがって生活習慣病はリスクファクターシンドロームともいわれ,個人により,いくつかの異なる危険因子が複数存在することに特徴がある。生活習慣病の予防や治療には,このような危険因子を軽減・除去することが最も重要になる。栄養不良● 一方,若年女子,傷病者,高齢者にみられる栄養不良も,戦後みられた食202●薬理ハインリッヒの法則自律神経存在部位表6-1 自律神経系の受容体神経節神経終末1過量投与・急速投与交感神経ニコチン受容体アドレナリン受容体副交感神経ニコチン受容体 ⇒アセチルコリン(ACh)が結合 ⇒ノルアドレナリン(NA)が結合表6-2 自律神経受容体のおもな刺激効果効果器受容体効果器の反応瞳孔散大筋収縮(散瞳)瞳孔括約筋収縮(縮瞳)心拍数増加,収縮力増強心拍数減少,収縮力抑制消化管効果器受容体α1,β2ムスカリンα1β2ムスカリンβ3ムスカリン効果器の反応消化管運動抑制消化管運動促進血管平滑筋収縮(血圧上昇)血管平滑筋弛緩(血圧低下)血管平滑筋弛緩(血圧低下)膀胱平滑筋弛緩膀胱平滑筋収縮心臓気管支平滑筋弛緩,気道分泌抑制気管支平滑筋収縮,気道分泌促進血管気道膀胱過食・偏食・不規則な食習慣肥満症・2型糖尿病・脂質異常症・高血圧・高尿酸血症+(A型性格)狭心症・心筋梗塞・脳血管障害特徴1)移行期が存在2)個人により危険因子が異なる3)個人が複数の危険因子をもつ図1-1 生活習慣病とは 潜在性の欠乏状態● たとえば,栄養欠乏症にはエネルギー・タンパク質欠乏症や,脚支配効果器ムスカリン受容体アドレナリン作動薬には,アドレナリン受容体(①)に結合して作用するものと,交感神経終末に作用してノルアドレナリンの遊離(②)を促進するものがある。抗アドレナリン作動薬には,アドレナリン受容体(①)に結合して作用を遮断するものと,交感神経終末に作用してノルアドレナリンの遊離(②)を抑制するものがある。図6-4 交感神経終末における化学伝達カテコールアミンは,ベンゼン環の3・4位にOH基のついたカテコール骨格に,アンモニア(NH3)の水素原子が炭化水素におきかわったアミンを含む側鎖を有する。図6-5 カテコールアミン動脈硬化表1-1 エネルギーおよび栄養素の摂取状態• 適正な栄養摂取状態• 栄養素相互のバランスがくずれた状態• 栄養素の摂取が不足した状態• 栄養素の摂取が過剰の状態113人間栄養学の必要性1今日の栄養問題 戦後の栄養学● 戦前・戦後を通じ,日本人は長年にわたり食糧不足や主食偏重の食習慣による栄養失調に悩まされた。とくに戦中・戦後は著しい食糧不足のために国民の多くが深刻な低栄養状態となった。限られた食糧を有効に活用することが重要な課題となり,栄養学は国民の健康を維持するためにおおいに貢献した。当時,エネルギーや栄養素を多く含む食べ物の利用が検討され,食物の生産,選択,加工,組み合わせ(献立),調理,給食などが栄養学の重要な課題となり,そのための研究,開発が行われた。いわゆる食物栄養学food nutritionとしての取り組みである。対策と看護の役割B交感神経作用薬2医療事故の分類アクシデントとインシデント3医薬品に関連した医療事故の実例3自律神経系の機能薬理学的な記載だけでなく、薬にまつわる看護上の留意点についての記載も充実しています人間を中心とした栄養学について基礎から学べます
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