7核 ▶MOVIE❶薬物治療の種類93を受ける必要がある。なお,安全性や使用実績などで一定の条件を満たした医療用医薬品については,処方せんなしでも薬局で購入できるように転用(スイッチOTC〔over the counter〕化)されたものもある。②要指導医薬品 処方せんがなくても薬局などで入手できる医薬品(OTC医薬品)であるが,薬剤師の対面による情報提供および,薬学的知見に基づく指導が義務づけられている。スイッチOTC化から一定時間を経過していないものや,劇薬(●▶55ページ)などがある。③一般用医薬品 OTC医薬品のうち,要指導医薬品以外のものである。一般用医薬品は,安全性の観点からさらに第1類~第3類に分類され,それぞれ販売時のルールや情報提供の必要性が定められている。 ●医薬部外品 厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が,一定の濃度で配合されているもの。治療というよりは予防や衛生を目的につくられたものであり,薬剤師などでなくても販売することができる。 ●その他 「医薬品医療機器等法」では,そのほかに化粧品や,医療機器,再生医療等製品についても規定がなされている。 現代の医療において,薬物治療は,治療法の大きな柱の1つであり,疾患や症状,治療目的によってさまざまな役割をもっている(●▶図1-2) ❶。 ●原因療法薬 病気の原因を取り除く薬物である。たとえば,感染症の原因である病原菌に対する抗菌薬や,インフルエンザなどのウイルス感染症に対する抗ウイルス薬などである(●▶68ページ)。しかし,本態性高血圧や糖尿病などのように,さまざまな素因が重なっておこる病気に対しては,薬物による原因療法は困難である。 ●対症療法薬 病気の症状を緩和させる効果をもつ薬物である。原因を除去するわけではないため,ほかの方法による根治や自然寛解にいたるまで,薬物を服用しつづけなければならない。たとえば,一般的な感冒薬(かぜ薬)は,その原因であるウイルスを取り除く薬物ではなく,咳・鼻水・発熱・頭痛などの症状を緩和するために使用される。また,降圧薬は血圧を下げる効に血中コレステロールを低下させる。 有害作用 有害作用は比較的少ないが,まれに横紋筋融解症 ❶をおこす。■フィブラート類 ベザフィブラート(ベザトールSR)などは,コレステロールの生合成およびトリグリセリドの産生をともに阻止し,さらにHDLコレステロールを上昇させる。 有害作用 横紋筋融解症・腎障害・胆石・無顆粒球症に注意する。 禁忌 腎機能低下患者に対してスタチン類と併用すると,横紋筋融解症をおこしやすくなるため注意が必要である。また,ワルファリンカリウムや経口糖尿病治療薬の作用を増強するため,これらの薬物とはなるべく併用しないほうがよい。■陰イオン交換樹脂 コレスチラミン(クエストラン)がある。腸管で吸収されず,胆汁酸と結合して排泄されるため,腸肝循環によるコレステロールの肝臓への再吸収を抑制する作用をもつ。結果的に,肝臓では胆汁酸を補うために血中コレステロールを消費することになる。 有害作用 1日8~16 gと服薬量が多く,味・においがよくないため,服薬率は低くなりがちである。また,有害作用として便秘をおこすことがある。■エゼチミブ(ゼチーア) 小腸でのコレステロール吸収を担う輸送体(小腸コレステロールトランスポーター)を阻害し,コレステロールの吸収を抑える。 有害作用 ワルファリンカリウムとシクロスポリンの作用増強に注意する。■ニコチン酸類 ニコチン酸誘導体であり,ニコモール(コレキサミン)のmRNA合成のステップではたらく酵素を阻害する。 ●ウイルス独自のプロテアーゼの阻害 宿主細胞内で合成されたウイルス由来の前駆体タンパク質はウイルス独自の分解酵素(プロテアーゼ)によって適切に切断されることで成熟する。リトナビルなどは,このプロテアーゼを阻害する。 ●ウイルス遊離の阻害 宿主細胞内で増殖したウイルス遺伝子は,外殻で包まれたのち宿主細胞から遊離する。オセルタミビルリン酸塩などは,このステップではたらく酵素(ノイラミニダーゼ)を阻害する。原因薬物抑制原因ホルモン等の不足補充症状症状薬物症状疾患・症状の原因を薬物によって除去あるいは抑制する。根治が期待できる。●▶図1�2 薬物治療の種類抑制症状を薬物によって抑制する。原因は除去しないため,根治は期待できない。ホルモン等の生体物質の不足によりおこる症状を,物質の補充により緩和する。A.薬物治療と看護薬物原因薬物予防症状疾患の原因となりうる事象を薬物であらかじめ除去・抑制することで,疾患を予防する。小腸エゼチミブ血管末梢組織(脂肪組織)●▶図3-15 ウイルスの増殖のしくみと抗ウイルス薬の作用機序RNAウイルスはDNAを合成するために,RNAを鋳型にしてDNAを合成する酵素(逆転写酵素)を用いる。DNAウイルスは,DNA鎖を伸長させる酵素(DNAポリメラーゼ)を用いる。抗ウイルス薬はこれらの酵素やその前後の過程を阻害し,ウイルスの増殖を抑える。ウイルスウイルス遺伝子(RNAまたはDNA)ウイルスの侵入と脱殻 インテグラーゼ阻害薬 ラルテグラビルカリウムウイルスRNAウイルスの遊離F.脂質異常症治療薬食事コレステロール合成スタチン類フィブラート類胆汁酸プロブコール陰イオン交換樹脂コレステロール肝臓分解遊離脂肪酸(トリグリセリド)フィブラート類C.抗真菌薬・抗ウイルス薬・抗寄生虫薬吸着・侵入・脱殻の阻害薬A型インフルエンザ アマンタジン塩酸塩B型肝炎 抗HBs人免疫グロブリン宿主細胞逆転写酵素阻害薬(RNAウイルス)HIV感染症 ジドブジン逆転写酵素またはDNAポリメラーゼウイルスDNA宿主DNAへの組み込みウイルスmRNA前駆体タンパク質転写核酸分解酵素誘導薬 インターフェロンプロテアーゼプロテアーゼ阻害薬HIV感染症 インジナビル硫酸塩 リトナビルウイルス遊離阻害薬A型・B型インフルエンザ ザナミビル水和物 オセルタミビルリン酸塩223促進阻害DNAポリメラーゼ阻害薬(DNAウイルス) アシクロビル ガンシクロビル ホスカルネットナト リウム水和物mRNA合成阻害薬 バロキサビル マルボ キシル:LDL受容体NOTE❶骨格筋の壊死によって筋肉の細胞成分が血液中へ流れ出す病態である。自覚症状として四肢の脱力(全身■怠感),腫脹,しびれ,筋肉痛,筋力低下などがみられる。a. 原因療法薬b. 対症療法薬c. 補充療法薬d. 予防薬●▶図9-14 脂質異常症治療薬の作用点PCSK9阻害薬PCSK9CMCMRVLDLLDLHDLCM :カイロミクロンCMR:カイロミクロンレムナントサンプルページ疾病のなりたちと回復の促進 ❸ 薬理学 3 おもな薬物 以下におもな抗ウイルス薬の臨床での利用を述べる。 ◆HIV感染症治療薬トリグリセリド合成 ヒト免疫不全ウイルスhuman immunodeficiency virus(HIV)の感染に対しては, 2 薬物の使用目的83導入として薬物療法の概説や薬物に関するチーム医療について解説しています。薬力学と薬物動態学について、看護師が必要なポイントを簡潔に説明しています。各分野の薬物について、主作用・副作用・作用機序などをビジュアルに解説。
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