2023年版_系統看護学講座_全70巻
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●▶図1-3 PDCAサイクルをまわす「研究力」 B なぜ看護研究を学ぶのか課題(問題)を特定するPlan(計画):看護計画をたてDo(実践):計画にそって実践しCheck(評価): 計画どおり実施できたか,期待された成果が得られたかを ◆「研究力」でPDCAサイクルをまわす方法 看護実践においてPDCAサイクルを効率よくまわしていくためには,次のような「研究力」が必要である。(1)課題(問題)を特定する。(2)情報を収集して吟味する(文献レビュー)。(3)状況を判断して新しいケアを計画・実践する。(4)実施成果を評価する。(5)(1)~(4)の結果をまとめ,ケアを改善し普及する。 これらによって●▶図1�3のようなPDCAサイクルが生み出される。第2章以降それぞれの力のつけ方を説明していくが,ここで1つの例をもとに概説しよう。 たとえば,長期臥床中の入院患者の殿でん部ぶの皮膚が一部が赤くなっていることを見つけたとする。あなたはどうするだろうか。まったく知識がなければ途方に暮れるしかないだろうが,手をこまねいているわけにはいかない。わからないことをわかるようにするための方法はある。Act(改善):うまくいかなかった点を改善する。ActCheck評価評価し まずは,「なにを明らかにすれば問題が解決するのか」という課題(問題)の特定が必要である。つまり,疑問を「解答可能な疑問」へとかえていく作業である。わからないことに出会ったとき,まず「それはなにか」を明らかにし,そして,それが「どんな状態なのか」を観察する。つづいて「なぜ,改善・普及第1章 看護研究とは 卒後,「よい看護職者になりたい」と思っている人は多いだろうが,研究者を志している人はきっと少ないだろう。すると,「なぜ看護研究を学ぶのか」という疑問をもつかもしれない。しかし,研究方法を学ぶことで,問題発見,問題分析,問題探究・調査,論理的思考などの能力や,説得力のある説明をしたり改善案を示したりする力を身につけることができる。これらの力は研究者だけに必要なのではない。患者のそばにいて,その命を預かることになる皆さんにこそ,獲得してほしい力である。 これら,「研究方法を学ぶことで身につくさまざまな力」(本書では,これを「研究力」とよぶ)が看護実践にどのようにいかされるのかを,本節で説明していく。Plan計画Do実践B.なぜ看護研究を学ぶのか45継続的改善へ課題(問題)の特定情報収集・吟味(文献レビュー)サンプルページ 看護研究 1 看護実践の質向上に必要な「研究力」 1 看護実践の質向上は疑問の解決から始まる 臨床の場で「どうなっているのだろう?」と疑問に思うことは多い。 「このケアは本当に正しいのだろうか」 「もっと効果のあるケアはないのだろうか」 「もっと時間や人手があればよいケアができるのに……。これはしかたがないことなのだろうか」 これらの疑問の多くは,「研究力」を使うことで解決できる。疑問を1つひとつ解決していけば,自身や職場の看護実践の質が向上していく。 2 「研究力」でPDCAサイクルをまわす 皆さんが目ざす看護職は,医療専門職である。専門職であるならば,自分たちの実践をたえず「よりよいもの」へと改善していかなければならない。 ◆PDCAサイクルとは 事業活動の品質管理の手法の1つに,1940年代のアメリカで生まれたPDCAサイクルがある。Plan(計画)→Do(実践)→Check(評価)→Act(改善)というサイクルを繰り返しながら,活動を改善していく手法である。PDCAサイクルは現在,さまざまな分野に応用されており,看護実践もこのサイクルを使って継続的に業務を改善することが期待されている。看護実践をPDCAサイクルにあてはめると,次のようになる。143看護研究の意味、さまざまな研究方法をわかりやすく学べるだけでなく、基本的な研究が実際にできる一冊!

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