J 事例展開4級1. 両耳の聴力レベルが80デシベル以上のもの(耳介に接しなければ話声第8章 生活者としての対象を支えるリハビリテーション看護第8章 生活者としての対象を支えるリハビリテーション看護表8-30 ICFの枠組みを用いた情報収集とアセスメント・ 郊外のマンションに住んでおり,最寄り駅からは歩いて20分程度かかる。受傷前は趣味も兼ねて自転車通勤していた。職場は都内の高層ビル内に本社がある。・ 大学生のころからアウトドア派で,自転車で旅をするのが趣味で,心身機能・身体構造活動・参加生活機能と障害環境因子個人因子背景因子 4 下肢切断患者の看護 3 評価尺度 4 リハビリテーション看護の方法動画スマートフォンなどの携帯機器でQRコードを読み込むと、手順を動画で確認できます。MOVIEWHO25 dB以下61 dB~80 dB耳元での叫び声を81 dB以上 摂食・嚥下障害のスクリーニングテストには,反復唾液嚥下テスト(RSST),改訂水飲みテスト(MWST),フードテスト(FT)などがある。また,ベッドサイドで簡単にできるスクリーニング方法として,頸部聴診と血中酸素飽和度モニタリングがある。 これらのスクリーニング検査の結果,嚥下障害の疑いがあれば,さらに機器を用いた機能評価として,嚥下造影検査(VF)と嚥下内視鏡検査(VE)を行う。(RSST) 口腔内を湿らせたあと30秒間で空嚥下を何回繰り返すことができるかをみる検査である。随意的な嚥下の繰り返し能力を手軽にみることができる。ただし,指示に従えない認知機能に異常のある人,頸部の術後の患者には実施できない。30秒間に嚥下回数3回行うことができれば正常で,2回以下だと嚥下障害の可能性が高く,高齢者では3回以上を正常としている。次の手順で行う。■1■頸部をやや前屈させた座位(リクライニング位も可)にする。■2■口腔内を湿らせる。■3■喉頭隆起および舌骨部にそれぞれ指腹をあて,30秒間唾液を連続して嚥下するよう指示する(図8-5)。位置に戻る。第8章 生活者としての対象を支えるリハビリテーション看護■4■嚥下運動に伴い,喉頭隆起が指腹を乗りこえて上前方に移動し,もとの■5■この運動を30秒間観察し,指腹を乗りこえた回数を嚥下回数とする。喉頭隆起図8-5 反復唾液嚥下テスト(RSST)情報・身長177 cm,体重63 kg(受傷前より6 kg減少)・右大■部下1/3で切断(切断長20 cm),断端形成中・右股関節がかたくなっており可動域に制限がある。・ 関節可動域測定(ROM-T):右股関節屈曲110度,伸展−10度,外転30度,内転5度股関節内転4/5,外転4/5,膝関節屈曲−/5,伸展−/5ガバリン,トラマドール塩酸塩)・夜間は痛みが増強し,よく眠れない日もある。・認知機能に問題はない。・ 移動は松葉杖を使用し,院内は自由に行動できることとしている。ベッド周囲でつかまり立ちをしている際にときどきふらつきがみられる。・食事・排泄・整容は自立している。・ コミュニケーションに問題はないが,痛みと不眠により落ち込んでいたり,看護師の対応が遅いとイライラしたりする様子がみられる。・営業職で外まわりが多い職場で,営業成績もよかった。・ 「中学生の時に骨折したときは治った。今回も時間はかかるけど治ると思っていた。まさか切断になるとは思わなかった。脚に包帯を巻いて義足がつけられるようにしないといけないけれど,まだ自分でやるのはこわくて,ゆるんだりずれたりしたときは看護師さんや理学療法士さんにお願いしたい。右脚がなくなったのに足の裏がビリビリ痛くて,痛みどめの薬もあまりきいている感じはしない。でも,医学的なことはわからないから,お医者さんに決めてもらいたい」と話している。住んでおり健在である。ともよく飲み会に行っていた。・妻との共働きのため経済的にはゆとりがある。・ 現在,利用している公的サービスはない。障害者手帳の取得手続きはまだ行ってない。とくに信仰はない。それがストレス解消法だった。第2指で舌骨部を,第3指で喉頭隆起を触知した状態で30秒間空嚥下を行ってもらう。喉頭隆起が指腹を乗りこえ,そのあと下降してもとの位置へ戻ったところで空嚥下が1回完了したと判定する。・ 徒手筋力テスト(MMT)(右/左):股関節屈曲4/5,伸展4/5,・ 幻肢痛に対して薬物療法中(朝昼夕:アセトアミノフェン,プレ・ 妻は市役所に勤めている。妻は育休から復帰したばかりなため,Aさんは保育園の送り迎えなどといった育児にも積極的に参加していた。・ 妻(30歳)と男児(2歳)の3人暮らし。両親は60歳代で,地方に・ 趣味で知り合った友人が多く,子どもが生まれる前は職場の同僚・ 32歳,男性,おおらかな性格,大手IT企業の営業職として勤務,・ とくに健康には気をつかってこなかったが,14歳のときに受傷した骨折以外は大きな病気や怪我はしたことはなく,健康に対する不安はなかった。・ ひとりっ子で,地方の国立大学経済学部を卒業したあと上京し,IT企業に就職した。・ 「痛みが続くようなら長く義足もつけられないだろうし,社会復帰するとしても外まわりの営業なんて無理だよね。子どもも小さいから家のことも心配で,考えはじめるとつらいんだよ。松葉杖で歩いていると,すれ違う人がちらっと脚のほうをみるんだよね。自分は障害者になったんだなって思うよ」との発言がある。・ 右大■部からの切断により体重・ 幻肢痛に対する薬物療法は十分な効果が得られておらず,不眠がみられる。・ 片脚での移動となるため,転倒・ 身のまわりのことは自立しているが,痛みや不眠があり,さらに切断により感情が揺れ動いていることもあり,断端形成や薬物のコントロールに主体的に取り組むことがむずかしい状態にある。・ 妻もはたらいており,かつ子育て中でもあり,妻からのサポートは十分には得られにくい。・ 住居が駅から遠いため,社会復帰後の通勤方法や働き方について検討していく必要がある。・ 障害者手帳の取得と,受けられるサービスについて,理解を促していく必要がある。・ 元来おおらかな性格で,自転車が趣味で,大手IT企業の営業職として活躍していた。・ 現在は痛みが強く,義足をつけた生活を具体的に考えることができていない。・ ボディイメージの変容という障喉頭隆起が指腹を乗りこえるアセスメントの減少がみられる。のリスクがある。■発症時期・年齢■発症前後の聴力変化■難聴の程度,左右差,日内変動■発語の程度■随伴症状の有無 (耳鳴,眩暈,耳閉感,頭痛など)■治療経験の有無と治療状況■内服薬の有無とその内容害の受容ができていない。■補聴器の使用状況■聴力補完の補助具などの使用■公的サービスの周知と利用■支援者の有無 (家族,友人,学校,職場など)図8-23 ICFの枠組みに基づく聴覚障害者のアセスメントの視点第8章 生活者としての対象を支えるリハビリテーション看護22①②748表8-12 聴覚障害の程度分類聴覚障害の程度正常聴力聞こえの障害状況日本聴覚 医学会ささやき声を聞きとれる交通外傷後右大■部切断術を受けたAさん(術後3週目)1 mでの普通の話26 dB~40 dB Aさんは32歳,男性,大手IT企業の営業職として勤務,妻(30歳)と男声を聞きとれる児(2歳)の3人暮らし。Aさんは,14歳のとき右足関節顆上骨折をし,ギ1 mでの大声を復唱できる軽度難聴中等度難聴41 dB~60 dBハビリテーションセンター研究紀要 37:47︲54,2016.高度難聴数語聞きとれる1) 三ツ本敦子ほか:国立障害者リハビリテーションセンター病院の補装具診療外来を受診した新規切断者の特徴.国立障害者リ重度難聴叫び声でも理解できない( WHO:The Grade of Hearing Impariment〈https:⊘⊘www.schwerhoerigen-netz.de⊘fileadmin⊘user_upload⊘dsb⊘Dokumente⊘Information⊘Politik_Recht⊘Hoergeraete⊘who-grades-hearing.pdf〉〈参照2022︲11︲01〉,難聴対策委員会:難聴(聴覚障害)の程度分類について〈https:⊘⊘audiology-japan.jp⊘cp-bin⊘wordpress⊘audiology-japan⊘wp-content⊘uploads⊘2014⊘12⊘a1360e77a580a13ce7e259a406858656.pdf〉〈参照2022︲11︲01〉より作成).表8-13 聴覚または平衡機能の障害の障害等級表級別1級2級両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全聾)3級両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの)語を理解し得ないもの)2.両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの5級6級1. 両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声され会話語を理解し得ないもの)2. 1側耳の聴力レベルが90デシベル以上,他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの健康状態■聴覚障害の原因となっている疾患や外傷の重症度■障害部位心身機能・身体構造活動・参加■活動範囲の変化■情報獲得への影響■コミュニケーション能力・手段■対人関係の変化■生活リスクへの対応 (警報音,サイレン,緊急放送など)■学習や仕事への影響■役割の変化とその必要性環境因子■年齢,性別■孤独や不安■治療や予後への理解■生活のしづらさ■発症前後の心理的変化 (自尊感情,ボディイメージなど)25 dB未満とくになし25 dB以上40 dB未満40 dB以上70 dB未満70 dB以上90 dB未満90 dB以上補聴器でも聞きとれないことが多い。人工内耳Ⅰ.聴覚障害聞こえの障害状況小さな声や騒音下での会話の聞き間違い,聞きとり困難を自覚する。会議などでの聞きとり改善目的では,補聴器の適応となることもある。普通の大きさの声の会話の聞き間違いや聞きとり困難を自覚する。補聴器のよい適応となる。非常に大きい声か補聴器を用いないと会話が聞こえない。しかし,聞こえても聞きとりには限界がある。の装用が考慮される。聴覚障害平衡機能障害平衡機能のきわめて著しい障害平衡機能の著しい障害個人因子サンプルページ リハビリテーション看護 1 アセスメントの視点 前述したように聴覚障害の多様であり,アセスメントにあたってはICFにそいつつ多面的に行う必要がある(図8-23)。ICFの枠組みでアセスメントを行うことで,対象者の健康状態や困りごとがわかるのと同時に,強み(ストレングス)の発見にもつなげることもできる。 ●心身機能・身体構造 聴覚障害の原因となった疾患や発症時期,聴覚レベル,随伴症状の有無などから聞こえの程度を正確に把握し,対象者の症状や生活のしづらさを理解していく。また看護師は,検査結果や医師による診察から心身機能・身体構造に関連する情報を得たうえで,聴覚障害の影響が対象者の認識や行動にどのようにあらわれているか,また経時的な変化はあるかなどについても観察する。とくに音を聞き分ける能力は,検査でとらえた聴力レベルと必ずしも一致しないことがあるため,実際の生活における能力を見きわめる必要がある。 ●活動・参加 聴覚障害による情報獲得の困難さや,周囲からの誤解,家庭内役割や対人関係の変化,社会参加の制限などは,本人にとって大きな心身のストレスとなる。対象者のしていること(実行状況)と,できること(能力)を把握し,日常生活に及ぼす聴覚障害の影響をアセスメントすることが 1 学習のポイント・ 四肢の切断患者の回復期における特徴を理解し,切断肢のケアの方法を説 2 事例 1 スクリーニング検査 ◆反復唾液嚥下テストrepetitive saliva swallowing test123初校初校 四肢の切断は,外傷や感染,血行障害,悪性腫瘍などが原因となる。近年は,高齢化により,糖尿病や閉塞性動脈硬化症などに伴う血行障害による足病変が増え,その重症化に伴う下肢切断が増加している。一方,2005~2015年における国立障害者リハビリテーションセンター病院の補装具診療外来の受診者をみると,外傷による切断患者が約50%を占め,とくに20歳代において多いことが示されている1)。 糖尿病による切断の場合は,足趾だけの部分切除を行うことで,切断後の荷重面をできるだけ広くし,踵で歩くことができる。一方,外傷による場合は,受傷した部位の血行状態と切断後のQOLがカギとなり,義足のつけやすさや義足をつけて生活する際の機能を考慮して切断部位が決定される。 ここでは,義足を装着することが多く,その適応のためにリハビリテーション看護が重要となる外傷後の患者に焦点をあて,右下肢切断を余儀なくされた患者の事例を解説する。 切断にいたる過程によって,患者の心理状態は大きく変化する。外傷による四肢切断の場合には,看護師は突然の受傷による心理的なショックをふまえつつ,切断後の生活を見こしたケアを提供していく必要がある。 ケアにあたっては,とくに回復期の,四肢切断というみずからの障害を受容し,新たな身体で生活を再構築していけるように支援することが重要となる。そのためには,患者の社会的背景をふまえ,患者をサポートする家族員や重要他者との関係性にも着目して患者の強みをとらえる必要がある。社会復帰に向けては,身体のセルフケアができるようになることだけでなく,就労先との調整も必要であり,患者・家族の支援のために多職種がそれぞれの役割を発揮することが求められる。明できる。・ 幻肢痛が及ぼす生活への影響について説明できる。・ 障害に対する患者の心理的変化を理解し,社会復帰に向けたケアについて説明できる。 聴覚障害のある人へのリハビリテーション看護を適切に行うためには,対象者の残存機能を最大限に発揮できるようにかかわる必要がある。ここまで見てきたように,ひとくちに聴覚障害といっても,発症時期や障害部位などによって障害のあらわれ方や程度はさまざまである。その人の聞こえなさ,そしてそれがもたらすつらさの理解に努めることが大切である。さらに,聴覚障害に伴って生じるさまざまな心理的・社会的問題についても援助し,その人らしい生活の再構築ができるように支援する。初校ICFの枠組みを用いることで「生活の再構築」に向けたポイントが理解できます。豊富な図表でリハビリテーション看護の実際が学べます。
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