系統看護学講座
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『系統看護学講座』を活用した指導例のご紹介臨床をイメージできる構成実際の看護には対象理解が欠かせません。掲載された事例が学生のイメージを広げ、豊かにします。1個ある。濾過の材料は血液(約1,000mL/分)であるが,実質的には血液のうち血漿成分(約500mL/分)だけである。血漿から濾過される糸球体濾液の量は,血漿の約20%であり,1分間に約100mLすなわち1日では約150Lにも達する。この糸球体濾液の量のことを糸球体濾過量glomerularfiltrationrate(GFR)という。この値は腎機能を示すうえできわめて重要な指標である。傍糸球体装置▶腎小体への血管の出入り口付近(血管極という)には,メサンギウム細胞1)やレニンを分泌する細胞など,特殊な機能を持った複数の細胞が集まっている(▶図9-1-c)。これらの細胞群をまとめて傍ぼう糸球体装置とよび,毛細血管を通過する血流量などを調節している。第9章腎・泌尿器のしくみと病態生理1781)メサンギウム細胞は,毛細血管の間隙にも存在しており,糸球体の複雑な形態の維持などに関与している。含む老廃物である。これらは尿中に排泄され,尿の主要な成分でもある。これらの血中濃度は腎障害で上昇するが,それ以外の原因でも上昇する。[1]クレアチニン血中クレアチニン濃度は腎障害がかなり進行しないと上昇しないため,血中クレアチニン濃度の上昇は,すでに腎障害がかなり進行してしまっていることを示している。これに対し,Ccrは腎障害初期からその変化をとらえることができる。このような理由から,軽度の腎機能障害を評価するうえでは,血中クレアチニン濃度よりもCcrのほうがはるかによい指標である。なお,血中クレアチニン濃度からGFRをある程度推定することはできる。これをeGFR(eは推定estimatedの頭文字)という。[2]尿素尿素はアミノ酸の代謝産物で,体内のタンパク質が分解されて生じる。そのため絶食時などでも尿素産生は増加する。尿素の濃度は,血中尿素窒素bloodureanitrogen(BUN)として表現する。[3]尿酸尿酸uricacid(UA)は,核酸(DNAやRNA)などを構成するプリン体の代謝産物である。したがって食物中や体内の細胞がこわれたときに尿酸が産生される。腎障害以外で血中尿酸濃度が上昇するのは,尿酸代謝障害(▶217ページ),悪性腫瘍(腫瘍組織では細胞の増殖だけでなく死滅もあるため),ある種の薬剤摂取などがある。プリン体を多く含む食物(たとえば貝や肉)の摂取でもわずかだが上昇する。腎機能を簡便に知るには,尿を調べる方法と血液を調べる方法の2つがある。前者は排泄された尿の性状や内容物から腎機能を知る方法であり,後者は本来尿に排泄されるべき物質が血中にどの程度残っているかを測定して,腎機能を知ろうとするものである。◉GFRとCcr腎機能を示す指標のうち最も重要なものは,糸球体濾過量(GFR)である。糸球体濾過量は直接測定することがむずかしいため,糸球体濾過量を推定する指標としてクレアチニンクリアランス(Ccr)という数値を用いる。クリアランスとは,その物質が単位時間にどれだけの血液量から除去されたかというもので,次の式から求められる。クリアランス=尿中濃度×時間尿量血中濃度クレアチニンは筋肉中のクレアチンという物質の代謝産物である。クレアチニンは糸球体で濾過され尿細管ではほとんど再吸収も分泌もされない。このような性質を持った物質のクリアランス値は糸球体濾過量にほぼ一致するため,「糸球体濾過量(GFR)≒Ccr」となる。Ccrの正常値はGFRと同じ100mL/分である。Ccrが50mL/分であれば,腎機能は正常の半分しかないことを示している。◉クレアチニン・尿素・尿酸の血中濃度クレアチニン・尿素・尿酸の3者はいずれも窒素を腎機能を知る指標NOTE多数のコラム基礎的な知識と臨床とのつながりをコラムなどで補えます。ex)解剖生理学「NOTE」患者像の理解「成人看護学」各巻冒頭に設けた「序章」では患者像を理解することで看護師としてできることを考えるきっかけを作ります。ex)呼吸器 「呼吸器疾患をもつ患者の姿」事前学習に事例の活用わからない言葉にはアンダーラインを引いて授業で確認することが効果的です。ex)臨床看護総論 「慢性期における看護」4

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