系統看護学講座
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サンプルページ基礎看護学 ❸ 基礎看護技術Ⅱサンプルページ基礎看護学 ❸ 基礎看護技術Ⅱ第9章 与薬の技術338  中心から外側に円を描くようにして消毒することで,刺入部を広範囲に清潔にすることができる。また,アルコールを自然乾燥させることで,消毒の効果が発揮される。  アルコールが乾燥する前に注射針を刺入すると,刺入とともにアルコールが注入されて痛みを引きおこす。(8)注射筒の目盛りと針の刃面が上になるように針の位置を調整し,注射針のキャップを外す。注射部位の皮膚をつまみ上げ,針を10~30度の角度で刺入する(▶図9︲16︲②)。刺入の長さは針の2/3程度とする。  注射部位の皮膚をつまみ上げることで,皮下脂肪の厚さが確認できる。また,刺入時の患者の痛みを緩和できる。  皮下脂肪の厚さを確認し,筋肉に到達しないよう,針の角度や深さに十分気をつける。患者がやせている場合には,上腕では筋肉に到達する危険があるため,腹部や殿部を選択する。(9)注射器(以下,注射針+注射筒を注射器とする)を固定し,内筒を引き,血液の逆流がないことを確かめる(▶図9︲16︲③)。同時に,刺入部位から手指先端までの範囲に,刺入による痛みやしびれがないことを確認し,薬液をゆっくり注入する(▶図9︲16︲④)。根拠注意根拠注意▶図 9︲16  皮下注射注入部位と刺入角度① 中心から外側に円を描くようにして消毒する。② 注射部位の皮膚をつまみ上げ,10~30度の角度で針を刺入する。③ 内筒を引き,血液の逆流がないことを確かめる。④薬液をゆっくり注入する。動画指をあてて固定する真皮筋肉表皮10~30度皮下組織第11章 症状・生体機能管理技術412(13)必要な採血管すべてに血液を採取したあと,必ず採血管をホルダーから除去し,駆血帯を外す。  採血終了後,採血管がホルダーに差し込まれたままの状態で駆血帯を外さない。駆血帯を外して圧力が変動することで,採血管の内容物などが患者の体内に逆流するおそれがある。(14)アルコール綿を穿刺部位に軽くあてた状態で採血針を抜き,穿刺部位をアルコール綿で押さえ,5分程度圧迫止血する。  圧迫しながら採血針を抜くと抜去時の痛みが増すため,圧迫は抜いた直後に行う。  出血傾向がある患者の場合は,長めに圧迫止血を行い,止血状態に注意する。(15)使用後の採血針とホルダーは,専用の廃棄物処理容器に捨てる。  針刺し事故をおこさないよう,リキャップはしない。針刺し事故防止機能つきの針の場合は,指定の方法で機能を作動させる。(16)採血後の検体は原則として室温で保存し,できる限りすみやかに検査室に搬送することが望ましい。ただし,検査項目によっては保存条件が指定されているものもあるため注意する(例:血中アンモニア値測定の場合は氷冷下で保存・搬送する)。また,血液の入った採血管を取り扱う際は手袋を着用して行う。注意ポイント注意注意▶図 11︲3  静脈血採血①刺入する。30度以下皮膚を手前に引く②針の角度を皮膚と平行にして2~3 mm進める。血管壁にあたると血管の抵抗がある針を皮膚と平行にする2~3mm進める③採血管を差し込む。④採血管を引き抜く。採血針を動かさない血液の流入⑤転倒混和。動画231B.病床での衣生活の援助から脱がせる。着せるときも,上衣が顔にかからないように襟ぐりをのばしながら行う。袖を着せる際は,上衣の袖口から手を入れ,患者の手関節を持って袖を通す(図6︲31︲③)。 ズボン脱着の際は,可能であれば患者に膝を立てて殿部を浮かせてもらう(図6︲31︲④)。殿部を浮かせられない場合は,側臥位にするなどして対応する(図6︲31︲⑤)。輸液ラインが入っている場合の注意点 輸液ラインが入っている患者の寝衣を交換する際には,事故抜去のおそれがあるため,とくに注意が必要である(図6︲32)。(1)ルートの刺入部・接続部の安全を確認しながら実施する。▶図 6︲32  輸液ラインが入っている場合の寝衣交換④ 輸液ボトルを通す:新しい寝衣の袖をたくし持ち,ボトルを支柱台から外して逆さにしないように袖に通す。ボトルを支柱台に掛け,ルートを整える。⑤ 輸液側の袖を通す:袖をたくし持ち,患者の手関節を支えながら肩までを通す。輸液の刺入部位と固定を確認したらクレンメを開放し,滴下を再開する。⑥新しい寝衣を着る。図6︲30の④以降と同様の手順。② 輸液側を脱がせる:輸液ラインのクレンメを閉じる。襟と袖口をひっぱりゆとりを十分にもたせ,片手で患者の手関節,肘関節を支え,もう一方の手で寝衣を持って腕を抜く。③ 輸液ボトルを抜く:袖をたくし持ち,ボトルを逆さにしないように輸液側の袖から抜く。抜いたボトルを支柱台に掛ける。① 輸液を行っていない側を脱がせる:図6︲30の①と同様の手順。保温と不要な露出を避けるため,患者の胸部にバスタオルなどを掛ける。動画動画一覧486486シーンセレクト30皮下注射【p.337~338】(1分30秒)音声(20秒)①注射部位の確認(1分17秒)②消毒・刺入シーンセレクト32筋肉内注射【p.343~344】(1分30秒)音声(48秒)①注射部位の確認(46秒)②消毒・刺入(1分11秒)31皮内注射【p.341】 音声129A.基本的活動の援助▶図 4︲22  車椅子への移乗(立位保持が可能な場合)① 患者を安定した端座位にし,車椅子を移乗しやすい位置に配置する。② 患者の車椅子側の足を前方へ向ける。③ 看護師は車椅子側の足を後ろ側に引き,支持基底面を広げる。④ 患者の車椅子側の手で肘掛けを握ってもらう。⑤患者を前傾させる。⑥患者の殿部を浮かせる。⑦ 肘掛けの高さまで殿部が浮いたら方向転換する。患者の肩甲骨部と腸骨部に手をあて,方向転換を支える。⑥́ ⑥を後ろから見たところ。看護師の重心は後ろ側の足に移す。⑦́⑦を後ろから見たところ。⑧ 患者の下肢がシートに軽く触れるように前傾姿勢をとらせる。⑨シートに座らせる。動画第3章 排泄援助技術923︲16︲⑥)。(6)利き手で浣腸の容器を持つ。利き手でない側の母指と示指で肛門を開くようにし,臍部の方向に向け,続いて脊柱に沿わせるように約5cmゆっくり挿入する。抵抗を感じたら引き抜き,角度をかえて挿入する(図3︲17︲①)。(7)チューブを片方の手で固定し,クレンメ・鉗子を解除して,浣腸液をゆっくりと直腸内に注入する(図3︲17︲②,③)。(8)注入後,チューブを静かに抜去し,肛門部をトイレットペーパーなどで圧迫する(図3︲17︲④)。(9)薬液注入後にすぐに排出せずに薬液を保持するように説明する。3~10分後,便意が強まってからトイレもしくは床上で排便してもらう。  十分に薬液が浸透し,便が軟化・膨張して腸蠕動が活発になるまでの所要時間は,人や状況によって異なるが,通常3~10分程度である。(1)実施中:チューブ挿入に際しての抵抗や肛門痛,液注入中の気分不快・吐きけ・腹痛の有無など患者の訴えを観察する。また,チューブ抜去の際に血液付着の有無を確認し,付着があれば医師に報告する。(2)実施後:反応便の量・性状,腹痛・腹部膨満感・残便感やしぶり腹・吐きけなどの腹部症状,顔色や気分不快の有無,バイタルサインといった一般状態を観察する。とくに高齢者は脱水を,虚弱な人はショック状態をおこす可能性があるため,注意深くバイタルサインを観察する。根拠実施中・後の評価・記録▶▶図 3︲17  グリセリン浣腸の実施① 母指と示指で肛門を開くようにし,はじめは臍部の方向に向け,続いて脊柱に沿わせるように約5 cmゆっくり挿入する。② 挿入の深さがかわらないように,チューブを片方の手で固定し,鉗子を外す。③浣腸液をゆっくりと直腸内に注入する。④ チューブを静かに抜去し,肛門部をトイレットペーパーなどで圧迫する。①②③④動画グリセリン浣腸や摘便などの新しい動画を追加しました。スマートフォンなどの携帯機器でQRコードを読み込むと、手順を動画で確認できます。動画豊富な写真で初学者の看護技術への理解が深まります。239A.酸素療法(酸素吸入療法)酸素ボンベによる方法(移動時の酸素ボンベの扱い) 酸素ボンベ,酸素流量計(圧力計付き),移動手段に応じたボンベ架台,点検時ボンベ架台(固定型),スパナ,中央配管方式と同様に指示された酸素投与器具。ガスの種類によってボンベの色は分けられており,酸素ボンベは黒色に塗装されている。*準備(1)ボンベを保管場所から取り出し,ボンベ架台に乗せて安定させる(図7︲5︲①)。  一般に医療施設で用いる酸素ボンベの酸素容量は500 L(ボンベ容積3.4 L),ボンベ内圧力は14.7 MPa(大気圧の約150倍)である。万が一ボンベが転倒しバルブがゆるんだり接続部が破損したりすると高圧ガスが噴出し,大事故につながりかねない。(2)酸素ボンベの接続部(ネジ)に酸素流量計のハンドルを水平にはめ込み,ハンドルを時計方向に最後までまわし切り,しっかり固定する(図7︲5︲②)。  手まわしハンドルがリング状になっているタイプでは,スパナを用いてきつくしっかりと締める。フロート式の場合は目盛りが水平になるように取りつける。(3)酸素流量計を人のいない方向に向けてバルブを開く(図7︲5︲③)。必要物品▶実施方法▶注意ポイント▶図 7︲5  酸素ボンベの扱い① ボンベ架台に乗せ,安定させる。② 酸素流量計を,接続部のハンドルをまわしてしっかり固定する。③ バルブを開き,圧力計で酸素残量を確認する(→)。④ 移動手段に合わせて,酸素ボンベ架台にのせる(写真はストレッチャーの酸素ボンベ架台に乗せ,酸素チューブを差し込んだところ)。バルブハンドル酸素流出口根拠・ポイント・注意点のアイコンで学習効果を高めます。13専門分野

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