系統看護学講座
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サンプルページ看護情報学7A.情報とは 3 知識 知識は,あることがらについての幅広い情報が,整理されて蓄積されていることであり,これによってデータを情報にかえることができる(図1︲2)。たとえば,「1.2倍」というデータを情報にかえるためには,その数値の計算方法や意味,血液型が決定されるしくみや特徴,胃がんの予防方法などについての知識がなければ評価することはむずかしい。 そして,その新しい情報は,目的に応じて使い分けて評価できるように知識のなかに取り込まれていくのである。たとえるなら,知識とは情報が整理されて入っており,必要なときに取り出せるようになっている引き出しであり,無秩序におもちゃがほうりこまれているおもちゃ箱とは違うのである。 知識があれば,データを得て新たな情報にして活用し,それを取り入れてはまた新たな知識をかたちづくることができる。専門家は,このようにしてつねに新しい情報を取り入れて知識をふくらませている。そうでない人は,データが与えられても,情報にもかえられず,知識にもできないので,よりよい意思決定はしにくい。たとえ専門家でも,これを怠っていれば,知識は古くなり,情報も得られず,意思決定に支障が生じるのである。 また,知識のさらに上のレベルとして,「知恵」を位置づける考え方もある。知識のあり方のなかにも,つねにすぐれた意思決定ができるレベルと,必ずしもそうでないレベルを考えるものである。つまり,いつも適切な意思決定が可能な,洗練された知識のあり方を知恵とよぶということである。そのためには,知識の量もさることながら,それを意思決定に結びつけるスキルが必要となる。情報における期待と価値 期待価値理論とは,なにかを目的として行動しようと思うかどうかという動機づけは,「期待」と「価値」で決定されているという心理と行動の理論である。これは先述した情報の定義によく似ている。行動の動機づけ結果がおこると予想される「期待」結果の「価値」=× たとえば,肥満が気になってダイエットをしようと思ったときに,ヨガをし知識▶知恵▶4期待価値理論▶知識データ情報▶図 1-2  知識がデータを情報にかえる第2章 社会と情報30が電子化されることで,患者にとっては,受付から診察までの待ち時間を知ることができたり,会計までの流れがスムーズに進んだりするといったメリットがある。 また,カルテの電子化により,保存できるカルテの量が飛躍的に多くなったことに加えて,医療者間の情報共有もしやすくなり,チーム医療の推進にも貢献した。さらに,患者に対してバーコードによる個人認証システムを用いることで,医療現場における与薬エラーや患者の取り違えといった医療事故を減らすことにも貢献している。 医療の受け手である人々の健康医療情報の利用に目を向けてみると,アメリカでは,2012年の調査でインターネット利用者の80%がインターネットで健康情報をさがしていた6)。わが国では,健康医療情報を得るのに最も用いるメディアをたずねた2012年の調査で,約4割がインターネットと回答し7),多くの患者が自分の病気や治療を調べるのにインターネットを利用しているといえる。 その利用の仕方は,病気や治療といった医学的な情報を調べるにとどまらない。同じ病気の患者が書いているブログを読む,オンラインコミュニティに参加して相手とコミュニケーションをとる,あるいはモニタリングした症状や検査値・測定値を共有するといったソーシャルメディアの利用が盛んである。進みつつある社会の変化 1 Society 5.0 Society 5.0とは,「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより,経済発展と社会的課題の解決を両立する,人間中心の社会(Society)」である8)。いまや,コンピュータだけでなく,テレビやエアコンなどの「もの」にもセンサーや通信機能が搭載されるようになってきた。これにより,機器の電力消費量を自動計測したり,外出先から遠隔操作したりできるなど,新しい価値が生まれている。 2 IoT・人工知能(AI)と第4次産業革命 Society 5.0のように,従来つながっていなかったものをインターネットに接続する流れは,インターネットオブシングスInternet of Things(IoT)とよばれる。Society5.0の社会では,IoTによりあらゆる人とものがつながり,医療分野でも,患者の呼吸や循環の状態を測定できる医療用ベッドの開発などの新しい価値が生み出されることが期待されている。 また,そこには人工知能Artificial Intelligence(AI)の活用も欠かせない。AIとは「コンピュータに知的な作業を行わせる技術」の総称をいう9)。IoTやビッグデータ,AIの活用といった一連の技術革新は,オートメーション化が進んだ医療の受け手の変化▶5IoT▶人工知能(AI)▶111B.病院情報システムと記録の仕方 ①看護データベース 看護診断をもとにした観察項目や質問項目などである。 ②看護診断 アセスメント情報の分析・判断結果である。 ③看護計画 看護診断より策定される成果目標や介入計画,クリニカルパスなどの標準看護計画である。 ④ワークシート,看護指示管理 患者に実施するオーダー内容や看護指示などが記載されている。 ⑤経過記録 叙述的記録・経過一覧表など,患者の経過や,治療・看護実践などを経時的に記述したものである(92ページ,表5︲1)。 ⑥看護サマリー 看護を必要とする人の経過や情報を要約したものである。 入院患者ケアシステムの様式は,医療施設ごとに導入するシステムによって異なる。たとえば聖隷三方原病院の場合,外来において入院が決定した時点で「入院診療計画書」が作成され,入院当日に入院受付において,「患者基本情報(連絡先,身長・体重,食物等の禁忌事項など)」「食事オーダ」などが入力される(図5︲11)。 病棟においては,看護師により「看護データベース」「ケアセット*1」「患者状態」「看護計画」「ケア項目(看護計画関連)」「処置オーダ」などが入力される(図5︲12︲a)。 入院中は「ケア実施」「処置実施」「看護記録」「患者の状態の加筆・修正」「ケ具体例▶*1各施設により独自に疾患別に必要なケアをセット化(カスタマイズ)したもの。ケアセットとは各メーカーが商品化したシステムの中で,パッケージ化された呼称の1つである。(画像はNEC製電子カルテシステムMegaOakHR)▶図 5-11  入院患者ケアシステムにおける患者基本情報の画面の例第13章 文字情報の整理304 これを工夫して書き直すとき,短い句が先頭にきたとしても,読点を打つことによってわかりやすい文にすることができる。 ただし,これまで説明したように,効果的な読点の打ち方の原則はあるが,日本語文法上では読点の打ち方に決まりはない。したがって,執筆者は読点を自由に打つことができる。しかし,だからといって読点を打ちすぎても意味をとりにくい文章になるので,注意が必要である。一般的には,1つの文に読点はせいぜい3個まで3)ともいわれている。 B レポートの書き方の基礎 レポートにはさまざまな種類がある。それは課題の種類に対応しているといってもよい。大きく分けると,単純に「○○について調べてまとめよ」という「調べ学習型」の課題,「○○について整理し,あなたの考えを述べよ」という「調べ考察型」の課題,「○○について論ぜよ」という「小論文型」の課題などがある。また,看護分野では,「A氏の事例についてレポートせよ」や,「卒業研究レポートを作成し提出せよ」といった課題もある。ここでは,それぞれの課題をふまえつつ,レポート作成に必要なポイントについて説明する。パラグラフライティング あらゆる型の課題において必要な技術が,パラグラフライティングである。パラグラフとは日本語の「段落」のことで,いくつかの文により構成され,それらは脈絡をもったまとまりをつくっている。レポートは,このパラグラフがいくつか集まってつくりあげられるものである(図13︲4)。 1つのパラグラフにおけるそれぞれの文は,役割が大まかに決まっている。よくかけた文章のパラグラフをみてみると,ある共通した文の役割をもとに構成されていることがわかる。まずは例文を見てみよう。「患者は気分がよくなって清潔なトイレを利用することで満足した。」「患者は,清潔なトイレを利用することで気分がよくなって満足した。」1パラグラフにおける文の役割▶ その大きな理由は,これまでの心理学の大きな関心が心の弱い部分に向いていたからだといえる❶。このために,現在の心理学の大部分は,ポジティブな内容を取り扱っていないのである❷。もちろん,弱い部分に注目することは大切なことで173B.情報の利用の仕方 2 研究に携わる者の個人情報保護に関する責務 研究成果の発表会や学会などの,共同研究者以外の人が不特定多数参加する場で,特定の研究対象者についてどうしても発表しなければならないことがあったとしよう。 そのような場合は,氏名・生年月日・住所など,個人が特定できる情報は,消去する。しかし,症例や事例によっては,被験者を特定できないようにすることが困難な場合もあるかもしれない。そのような場合は,被験者の同意を得なければならない。 研究対象者の同意を得ないで,利用目的の達成に必要な範囲をこえて,個人情報を取り扱ってはならない。また,利用目的を変更する場合は,あらためて研究対象者に変更の内容を説明し,同意を得なければならない。 また,研究目的をかってにかえてはならない。たとえば,卒業研究をするために指導教員から,ある介入研究のデータを渡されて,「このデータの解析をしなさい」と言われたとする。その卒業研究のための解析を行おうとする場合でも,当初の介入研究の目的にそって行われなければならない。 本人の同意がなく個人情報を集めたり,かってに個人情報上の数値をかえるなどの不正な扱いをしてはならない。また,集めた情報が外部にもれないように,研究者が管理をしなければならない。また,第三者(研究者でもなく被験者でもない人)には個人情報は提供しない。ただし,新たに研究者グループに加わった人や,研究の分析についてアドバイスしてくれる人などは,第三者には該当しない。 その研究における個人情報の取り扱いに関して,研究対象者などからの苦情や問い合わせがあったときには,適切に,また,迅速な対応に努めなければならない。研究期間中に問い合わせがあるものと考えて,あらかじめ対応を考えておく必要がある。ソーシャルメディアの普及と患者の個人情報 昨今,ソーシャルメディアの普及によって,公開日記のかたちで,自分の日々の経験や感じたこと,撮影した写真などを不特定多数の人に発信することができる。ただし,このような行為を通じて患者の個人情報が漏洩することも十分にあるため,注意する必要がある。しかし,そもそも掲載した内容が患者の個人情報にあたることを自覚しないでこのような行為にいたるケースが少なくない。 看護職や看護学生が書くブログやSNSなどにおいて,個人情報と気づかずに掲載してしまう内容として,次のような例があげられる5)。記事や撮影した写真・動画などを投稿(アップロード)する前には,患者の個人情報が含まれてい成果の公表時の 匿名化▶目的内での 情報使用▶情報の適正な 収集と管理▶問い合わせへの 対応▶3第12章 Excelによる統計解析266[ピボットグラフ]で「縦棒グラフ」を選択すると,図12︲12︲b︲⑥のようなデータの分布の様子を示すグラフも簡単に作成できる。また,[ピボットグラフツール]の[デザイン]リボンの[クイックレイアウト]で[レイアウト8]を選ぶと簡単にヒストグラムを作ることができる。a.度数分布表の作成123456動画b.度数分布表からのヒストグラムの作成▶図 12-12  量的データのデータ分布グラフの作成手順情報に関する基礎的な知識を視覚的に学習できるようにしています。変化の激しい情報社会の最新動向を、看護の視点から解説しています。変化の激しい情報社会の最新動向を、看護の視点から解説しています。SNS時代に看護学生に求められる情報保護についての注意点を新規に盛り込みました。保健医療・看護の現場で求められる情報科学やICTの活用例を網羅しています。レポートの書き方についての解説を大幅に拡充しました。情報処理の操作には動画をつけました。弊社ウェブサイトから演習用Excelファイルを配布しています。動画145別巻

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