系統看護学講座
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サンプルページ 栄養食事療法56第5章 循環器疾患患者の栄養食事療法 循環器疾患では,高血圧・虚血性心疾患・脳血管障害などがよく知られているが,閉塞性動脈硬化症・バージャー病・大動脈炎症候群などの動脈疾患,血栓性静脈炎などの静脈疾患,リンパ管疾患も含まれる。これらの疾患の予防や再発防止には,動脈硬化をおこす危険因子への対策が重要である。 本章では,その対策として栄養食事療法や生活習慣が重要である疾患について取り上げる。なお,循環器疾患は,肥満や,糖尿病・脂質異常症・痛風などの代謝性疾患により影響を受けているので,生活指導や食事指導ではこれらの原疾患についても参考にしてほしい。A高血圧症1栄養食事療法の原則 高血圧は,原因が明らかでない本態性高血圧と,二次性高血圧に分類される。本態性高血圧がおよそ90%を占め,遺伝因子と,食塩の過剰摂取,肥満,運動不足,アルコールの過剰摂取,喫煙,ストレスなどの環境因子が関与している。 治療の基本は生活習慣の修正(非薬物療法)で,日本高血圧学会では生活習慣の修正項目を発表している1)。栄養食事療法にかかわる内容として食塩制限,野菜・果物の積極的摂取,適正体重の維持,節酒がある。これに基づき,日本人の食事摂取基準を参考に適正な栄養の摂取と規則正しい食生活へ導く。肥満者では肥満の是正と適正体重の維持を目標とする。 食塩摂取量が高血圧と密接な関係があること,また,食塩制限により降圧薬の使用量を少なくできることから,食塩制限がすすめられている。ただし,改善がみられない場合や高リスク者では薬物療法が併用される。2栄養食事療法の実際 エネルギー▲ 25~30 kcal/標準体重kg/日を目安にBMI 25未満の適正体重を維持する。B「動脈硬化症」の項を参照(▲60ページ)。 タンパク質▲ 1.0~1.2 g/kg/日を目安とする。 脂質▲ 脂質エネルギー比率は20~25%とする。脂質異常症などを合併している場合はB「動脈硬化症」の項を参照(▲60ページ)。 食塩▲ 6 g/日未満とする。 2019(令和元)年度の国民健康・栄養調査によると,食塩の平均摂取量は男1)日本高血圧学会治療ガイドライン作成委員会編:高血圧治療ガイドライン2019.ライフサイエンス出版,2019.57A.高血圧症性で10.5 g/日,女性9.0 g/日であり,健康日本21(第二次)の目標量である「1日あたりの食塩摂取の平均値8 g」に達していない。国民健康・栄養調査によると,総摂取食塩量の約半分をしょうゆ・みそなどの調味料,漬物,塩蔵品で摂取していることから,これらの調味料の使い方や漬物の摂取量の調整がポイントとなる。加工品・調味料・調理品の食塩量を表5-1,5-2,5-3に示した。▼表5-1 食塩を多く含む加工品食品名100 g中の食塩(g)常用量あたり量(g)食塩(g)うどん(ゆで)0.32000.6食パン1.2 600.7塩ザケ1.8 400.7シシャモ1.2 300.4たらこ(生)4.6 301.4アジ干物(生)1.7 601.0のりつくだ煮5.8 150.9しらす干し6.6 151.0めざし(生)2.8 100.3蒸しかまぼこ2.5 200.5焼きちくわ2.1 400.8ロースハム2.3 200.5プロセスチーズ2.8 200.6クラッカー1.5 200.3ポテトチップス1.0 300.3あんパン0.3 900.3(日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉による)▼表5-2 食塩1 gに相当する調味料調味料重量(g)目安量濃い口しょうゆ7小さじ1杯強薄口しょうゆ6小さじ1杯減塩しょうゆ12大さじ1杯弱淡色辛みそ8大さじ1/2甘みそ16大さじ1杯ウスターソース12大さじ1杯弱濃厚ソース18大さじ1杯トマトケチャップ32大さじ2杯マヨネーズ50大さじ3杯(日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉による)▼表5-3 おもな調理品の食塩の量調理名食塩量みそ汁(1杯)1.2~1.5 gうどん,そば(1杯)5.4 g(汁4.8 g,めん0.6 g)タコ焼き(8個)3.5~4 gにぎり寿司(8貫)1~1.2 g(さらにつけしょうゆで1.2~1.5 g)おにぎり(市販品1個)1~1.5 gチャーハン(1杯)2 gかつ丼(1杯)4~5 gインスタントラーメン(1袋)4.5~6.0 g野菜ジュース(コップ1杯150 mL)0.9 g各栄養素を多く含む食品の表などを多数掲載。資料集としても活用できます。疾患の説明は要点にしぼり、栄養食事療法の原則、栄養食事療法の実際、看護上の注意という流れで解説していきます。129別巻

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