医学界新聞

2019.10.21



2018年『胃と腸』賞授賞式


写真 竹内学氏
 2018年『胃と腸』賞の授賞式が9月18日,笹川記念会館(東京都港区)で開催された早期胃癌研究会の席上にて行われた。本賞は『胃と腸』誌に掲載された論文から,年間で最も優れた論文に贈られるもの。

 今回は,対象論文185本の中から,竹内学氏(長岡赤十字病院)らによる「食道表在癌における深達度診断からみたB2血管の意義」[胃と腸. 2018; 53(10): 1343-52.]が受賞した。当日は選考委員の松本主之氏(岩手医大)から,選考経過の説明とお祝いの言葉が述べられ,竹内氏に賞状と盾が授与された。

正診率の低いB2血管における深達度診断精度向上に資する

 2011年に作成された日本食道学会拡大内視鏡分類は現在,臨床の場で広く用いられている。この分類に基づくB1血管やB3血管における食道表在癌の深達度診断正診率は高い一方,「ループ形成に乏しい異常血管」と定義されるB2血管の正診率の低さが課題とされる。誤診の一因として,B2血管を呈する病変の深達度が他の血管と比較し幅広いことが考えられた。竹内氏らはB2血管の領域性に着目し,受賞論文ではその長径と深達度の相関を検討した。

 検討の結果,誤診されやすい深達度であるT1b-SM2癌のB2血管領域長径中央値は,それ以浅の癌に比べて有意に大きいことが明らかになった。そこで氏らは,B2血管領域がB2血管のみで構成されるpure typeと,B1血管が混在するmixed typeに分けて多施設での検討を実施。Pure typeでは,T1b-SM2癌のB2血管領域長径はそれ以浅の癌より有意に大きい結果が得られた。B2血管における深達度診断の精度向上のためには,B2血管の領域性を加味した診断が有用である可能性を報告した。

 受賞のあいさつで竹内氏は自身の研究生活を振り返り,「多くの先生方に内視鏡と病理のつながりを指導していただく中で,病理組織を顕微鏡で自ら観察し,それを内視鏡にフィードバックする光景に衝撃を受けた経験が,自分を診断学の道に導いてくれた」と恩師への感謝の言葉を述べた。今後の抱負については「これまで培ってきた診断学を『胃と腸』誌や早期胃癌研究会に生かせるよう努力し続けたい」と語った。

*授賞式の模様は『胃と腸』誌(第54巻12号)にも掲載されます。

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