医学界新聞

2018.05.07



革新的医療から普遍化への転換期

第17回日本再生医療学会開催


 第17回日本再生医療学会総会が3月21~23日,鄭雄一会長(東大大学院)のもと,「産官学民の知の結集」をテーマにパシフィコ横浜(横浜市)にて開催された。革新的医療と目されてきた再生医療に法的基盤が整い,普遍化への転換期にある今,取り組みはどこまで進んだか。本紙では,その現状と展望を議論したシンポジウム「再生医療ナショナルコンソーシアムの進展と未来」(座長=阪大大学院・澤芳樹氏,JR東京総合病院・髙戸毅氏)の様子を報告する。


 2014年に薬機法と再生医療安全性等確保法が施行された。法整備の後押しを受け,再生医療分野の研究・開発件数は増加傾向にある。一方で,研究・開発施設間の持つノウハウを蓄積,共有するプラットフォームは存在せず,個別での研究・開発をせざるを得ない状況が続いていた。そこで,日本再生医療学会は日本医療研究開発機構(AMED)再生医療臨床研究促進基盤整備事業「再生医療等臨床研究を支援する再生医療ナショナルコンソーシアムの実現」(研究代表者=阪大病院・岡田潔氏)を16年度より開始。学会を挙げて臨床研究・開発支援を始めた。

普遍化を支える体制整備は順調

 シンポジウムでは岡田氏がナショナルコンソーシアムの構想を概説した後,各領域の担当者が進捗状況を報告した。岡田氏は冒頭,「ナショナルコンソーシアムの目的は再生医療の普遍化」と強調し,AMED事業開始時から中核に位置付ける臨床研究促進,人材育成,データベース構築の3領域に力を注ぎつつ,成果の社会実装に向け産学連携,社学連携を積極的に推進する考えを述べた。18年度からは新たに,各国の学術団体等と情報交換を行う国際展開にも力を入れるという。

 再生医療研究の全国的な技術的支援ネットワーク構築を進める同学会ネットワーク委員会委員長の水野博司氏(順大大学院)は,現時点の支援の成果を発表。16~17年度の実績(42件)の半数以上は,非臨床試験→臨床研究準備段階,または臨床研究準備段階→臨床研究開始の支援であり,臨床研究促進への手応えを強調した。臨床研究支援の指針整備や学会・論文での周知などにおいては,「17年度までの目標達成率は100%」と順調な進捗を報告した。

 人材育成の立場からは,再生医療における細胞培養の知識・技術を認定する臨床培養士制度に関する委員会委員長の紀ノ岡正博氏(阪大大学院)が登壇。臨床培養士の指導に当たる上級臨床培養士認定制度開始に向けた取り組みを発表した。制度発足に向け,学会による標準的テキストやeラーニングシステムの作成を進めている現状を報告した。

 再生医療等製品は条件及び期限付承認制度を活用すれば早期の実用化につながるが,製造販売承認には薬機法に基づく市販後データを収集する必要がある。佐藤陽治氏(国衛研)はデータベース委員会委員長の立場から,臨床試験と市販後調査のシームレスなデータ管理をめざす再生医療等データ登録システム(NRMD)構築の状況を発表した。臨床試験段階ではデータベースを他学会と共同で整備し,対照群データは市販後のヒストリカルコントロールとしての活用も視野に入れるなど,再生医療等製品の開発プロセスに即したデータベースの発展へ意欲を示した。

 シンポジウムでは他に,畠賢一郎氏(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)が再生医療の製品化に欠かせないアカデミアと企業のマッチングの場を作る産学連携,八代嘉美氏(京大iPS研)が社会の再生医療へのリテラシー向上と研究進展の両立をめざす社学連携の展望を示した。

シンポジウムの模様

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