医学界新聞

寄稿

2017.08.07



【特集】

医師,看護師,医師事務作業補助者の連携による
業務効率化の最前線


 佐久総合病院の高度急性期部門を分割移転する形で2014年に開院した佐久医療センターは,開院と同時に「患者サポートセンター」を設置し入退院管理を一元化した。専任の看護師と医師事務作業補助者の配置により,医師と外来・病棟看護師の業務負担の軽減に成功している。本紙では,医師事務作業補助者の矢口智子氏(金沢脳神経外科病院)と共に,患者サポートセンター設置に尽力した西澤延宏氏(佐久医療センター)を訪ね,患者サポートセンターでの看護師と医師事務作業補助者の連携の様子を取材した(関連記事)。


「患者さんの手術入院が決まりました」「書類の確認をお願いできますか」

 佐久医療センターへの入院が決まった患者がその当日に訪れる「患者サポートセンター」。待合室受付の裏手にある事務室に入ると,そこは35人分のデスクが置かれている。入退院支援室では看護師と医師事務作業補助者が言葉を交わす光景が頻繁に見られた。

 患者サポートセンターには入退院支援室,医療福祉相談室,地域医療連携室,医事課などが集約され,看護師や医師事務作業補助者など59人のスタッフが在籍する。取材に同行した矢口氏は,「これほど緊密な連携を見たのは初めて」と驚きの表情を浮かべる。多職種連携の上に成り立つ業務効率化が,患者サポートセンターの特徴だ。

医師と患者サポートセンターの連携で,医師は本来業務に集中

 近年,急性期病院では平均在院日数の短縮,患者の高齢化,記録量の増加などにより医師・看護師の業務負担は増える一方だ。負担増大に対するマネジメントの一つとして注目を集めるのが医師事務作業補助者の活用である。

 同センターの患者サポートセンターを訪れる患者は1日平均約100人で,そのうち新規入院は約40人。12部屋の個室を備え,患者・家族に対応する。

 患者サポートセンターの中核となる入退院支援室には16人の専任看護師と2人の看護助手,4人の医師事務作業補助者が所属する(写真)。クリニカルパスにのっとり,予定入院患者のほぼ全例への説明,相談,術前検査スケジュール管理などを一手に引き受けている(外来医師と患者サポートセンターの連携の流れはを参照)。

写真 患者サポートセンターの様子。
①手前が医療福祉相談室,左奥が入退院支援室。「スタッフ同士の会話促進のため,仕切りを作っていない」(西澤氏)。
②入退院支援室では,並んで座る医師事務作業補助者の後ろから看護師が入力内容の確認を行う。奥の医師事務作業補助者は外来医師から新たな入院連絡を受け,この後,医師の指示書が届いて代行入力に当たる。毎日約100人の患者に対応するには職種間の緊密な連携が欠かせない。

 佐久医療センターの患者サポートセンターによる入退院マネジメント(クリックで拡大)
①外来医師が患者の手術・入院を決める。患者サポートセンターに電話連絡を行い,クリニカルパスごとに標準化された書類に手術日や実施する検査項目などを医師が記入する。
②①の書類を元に入退院支援室の医師事務作業補助者が代行入力。患者用クリニカルパス説明資料などを作成。
③主に看護師が患者・家族と話し合い,検査日程の調整や病歴聴取,患者の不安への対応を行う。
④必要に応じて他職種より患者サポートを行う。
⑤以上の結果を受け,検査オーダーやスケジュールを医師事務作業補助者が入力。
⑥全ての内容を医師が確認し,承認。

外科医と看護部,事務職員の連携から始まった

 病院分割前の佐久総合病院では2007年,西澤氏を中心に患者サポートセンターの前身となる「術前検査センター」を全国に先駆けてスタートした。看護師5人と事務職員1人を配置し,検査スケジュールや病歴・服用薬管理,患者への説明など,入院前の管理を多職種で行う体制を作った。クリニカルパスを適用できる外科系患者から始め,2013年には予定手術患者のほぼ全例に拡大した。

 同院がDPC対象病院となった2006年当時,入院管理は診療科ごとに医師や外来・病棟看護師が担っていた。西澤氏は「診療に忙殺される中で,術前中止薬の服用確認の遅れなどによる手術延期事例もあった」と振り返る。患者からは術前の説明や心理的ケアが不十分との意見が寄せられたこともあった。

 術前検査センターによる術前管理は院内からの評価が高かったものの,入退院支援室や地域医療連携室などと離れており,患者や職員が移動する必要があった。そこで2014年の佐久医療センター開院に合わせて各部署を1か所に集約し,「患者サポートセンター」を設置した。連携を強化することで,外科系だけでなく内科系入院患者の入退院管理もフォローする仕組みが出来上がった。

入退院支援室内での連携で,患者・スタッフの満足度向上

 患者サポートセンターでの連携により何が変わったのか。医師事務作業補助者7年目の恵星まどか氏は「手術までの期間が短い場合や手術日に変更が生じた場合を含め,検査スケジュール全体を調整し,最適化している」と話す。スケジュール調整は各医師がばらばらに行うよりも,患者サポートセンターが担うほうが円滑になる。矢口氏は「医師事務作業補助者は医師の事務作業の代行だけでなく,病院全体の業務効率化という新たな価値を生んでいる」と考察する。

 さらに矢口氏は,医師事務作業補助者と看護師の相互信頼の上に,それぞれの職種の強みを生かした連携ができていることにも注目。同センターでは,患者への説明書類の作成など,従来看護師が行っていた業務の一部を医師事務作業補助者と分担,協力している。入退院支援室主任看護師の黒澤まゆ美氏によると,協働によって看護師に時間の余裕が生まれ,患者からは「入院が決まった当日に看護師から詳しい説明を受け,不安なことを相談できて満足している」との声も出ているそうだ。

 患者サポートセンターで医師事務作業補助者と看護師がお互いの業務を確認し合い,その後医師がチェックする体制はより多くの目が入るため,医師が一人で管理するよりも医療安全上のメリットは大きい。西澤氏は患者サポートセンターでの多職種連携について,「医師・看護師の負担軽減に加え,業務効率化や患者満足度の向上,医療の質・安全の向上につながっている」と成果を語った。

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