第5回日本移植・再生医療看護学会開催
2009.12.14
第5回日本移植・再生医療看護学会開催
添田英津子会長 |
会長講演「移植医療と看護の役割Up-to-date」では添田氏が,海外も含めた臓器移植をめぐるこれまでの経緯を解説。まず,臓器移植法改正のきっかけともなった,2008年5月の国際移植学会による「臓器取引と移植ツーリズムに関するイスタンブール宣言」を紹介。これにより,これまで海外渡航移植に頼っていたわが国で,国内での臓器移植の推進を望む声が高まることとなったと述べた。
次に,生体肝移植の適応として1996年に提示された“ミラノ基準”に言及。逸脱例のなかにも良好な予後を期待できる症例があることが近年明らかになってきたことから,新たな適応基準の見直しについての議論も高まっている。このような流れのなかで,複数の臓器移植を同時に行うコンバインド移植,腹壁を含めた臓器移植などが学会等で注目を集めていると紹介した。
また,氏は臓器移植の変化に伴い看護の役割も変化しつつあり,米国では看護師の専門化が進んでいると述べ,今後必要な看護介入として,メタボリックシンドローム,プロリハビリテーション,性の問題を挙げた。
会長講演に続き,遺伝性難病を持って生まれ,臓器移植の経験などを記した『ミラクルツインズ!――難病を乗り越えた双子の絆』(岩波書店)を出版したイサベル・ユリコ・ステンツェル・バインズ氏とアナベル・マリコ・ステンツェル氏が登壇し,臓器移植での試練や喜びについてスピーチを行った。
生体肝移植を通したドナーの変容に迫る
教育講演「Living Related Liver Donor's Perceptions of Life after Liver Donation」では,アネット・スー・ナサー氏(米国スタンフォード大附属ルシール・パッカード小児病院)が「生体肝移植ドナーの臓器提供後の人生観」について講演した。そのなかで氏は,生体肝移植はドナーにさまざまな変容をもたらすと指摘。最悪の状況を乗り越えたという自己の気付き,ドナーとレシピエントという立場に置かれたことによる家族関係の明確化,地域社会の支援などを受けたことによる地域社会の見方の変容の3点を挙げた。
氏は現在,看護研究を支援するナーススペシャリストとして勤務するとともに,肝臓・腎臓移植の生体ドナーに対し,適切な情報が提供されているかなどを確認する「独立ドナー擁護者」としても活動している。米国の生体肝移植施設では,この「独立ドナー擁護者」の設置が義務付けられているという。
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