毎日の臨床の場で活きる親しみやすい肝疾患の入門書
書評者:木下 祐加(虎の門病院・後期研修医)
「実践 肝疾患ケア」は,「実践」「ケア」という二つの言葉からわかるように,肝疾患の患者さんをいちばん近くで支える人たちの役に立つように,という思いから書かれた本です。執筆も編集も,現役で肝疾患治療に携わっている医師と看護師によって行われています。
この本は,日本における肝疾患の主要テーマである,ウイルス性肝炎・肝硬変・肝がんに焦点を絞り,それぞれについて診断と治療をわかりやすく示しています。
ひととおりさらっと目を通すだけで大まかな流れをつかむことができるので,これまで肝疾患に関わったことのない人の入門書として最適です。例えば,ウイルス肝炎におけるマーカーの評価方法,肝がんの各種治療方法など,学生時代に一度は習っていても実際にどうしたらいいかわからない時には,この本をぜひ手にとってください。
一方で,「どうしてそうなるのか」という科学的根拠が所々に散りばめられていて,肝臓を専門にする予定の人が読んでも,また新たな知識が得られると思います。最近話題のインターフェロン治療についても,その適応と治療成績がわかりやすくまとめられていて,患者さんからの質問に答える際に役立ちます。ガイドライン,症例報告,臨床試験などがふんだんに盛り込まれており,見た目の親しみやすさから想像できない充実した内容になっています。
虎の門病院の「肝臓科」スタッフによってつくられた最新の肝臓ハンドブックを,ぜひ毎日の診療の場で活用してください。
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