今月の主題●座談会
よい内科医になるためには
藤田 今月の『medicina』は,第一線でご活躍の先生方の頭の中身の一部をぜひ伝授していただきたいという思いと,とっておきの経験談をぜひ共有させていただきたいという思いの2つから随分ずうずうしいお願いをしたと,振り返って反省することしきりの特集です.しかし,先生方のおかげですばらしいものになりました.私が診断に行き詰った時に作った格言は,「困った時は,格言集・症例集をめくれ」で,本号はそれにぴったりの豪華絢爛な内容です.本日は,お忙しいなか3人の先生にお集まりいただき,さらにこの特集を膨らませるために,経験談や日頃研修医に教えている事柄などをご披露いただこうと思います. ■私のロールモデル藤田 まずはじめに,先生方がロールモデルとなさっている方々は多くいらっしゃると思いますが,そのなかのお一人についてお話しいただきたいと思います.岡田先生,いかがでしょうか. 岡田 まず頭に浮かぶのはグレイニー先生という,僕がニューヨークへ行ったときの最初の指導医の先生です.当時45歳ぐらいの先生で,一般内科外来の責任者でした.とても教育熱心な先生で,彼が最初に配置された病棟のattendingだったのはとても運が良かったと思っています. その先生のすごいところは,とにかくたくさん勉強をして,いろいろな論文を読んで,一般内科医として専門医と意見が食い違ったときに,必ずその専門医に対して,「僕は,こういう理由でこう思う」ということを言えるように勉強しているんですね.専門医が言ったことを真に受けないで,自分なりの考えをもって話し合って,その専門医の先生が,グレイニー先生が納得できる説明をすればそれで納得するし,そうじゃなければ納得しないというものを持っていました. 僕としては,それがすごく勉強になりました.自分が何かをするときに,もちろん,自分よりも経験のある専門の先生に聞くことは大切ですが,聞く前にちゃんと自分で考えて,その考えの根拠をもって勉強しておく.その根拠を示せるほどの勉強をしているというのは,単に調べているんじゃなくて,定期的にしっかり勉強していて,もともと幅広い知識があるからできるんですね.このことはわかっているはずだ,これはデータがあるはずだという予想がつくので調べられるわけです.もともとの知識がないのに,そのときだけMEDLINEを引いたり,Google Scholarを見ても,それでは自分の都合のいい論文が出てくるだけで,本当の知識にはならないと思うんですよ. グレイニー先生からは,そういう勉強に対する姿勢を学んだだけではありません.彼は患者さんにも非常にやさしくて,ニューヨークだと英語のわからない患者さんもたくさんいるんだけれども,そういう患者さんにも分け隔てなく接しているのを見て,「こういう先生に診てもらえれば安心だな」というふうにも思いました. (つづきは本誌をご覧ください)
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