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今月の主題●座談会

よい内科医になるためには

発言者●発言順
藤田芳郎氏(トヨタ記念病院腎・膠原病内科)=司会
岡田正人氏(聖路加国際病院アレルギー・膠原病科(成人,小児))
須藤博氏(大船中央病院内科)
徳田安春氏(筑波大学大学院人間総合科学研究科臨床医学系/水戸協同病院総合診療科)


藤田 今月の『medicina』は,第一線でご活躍の先生方の頭の中身の一部をぜひ伝授していただきたいという思いと,とっておきの経験談をぜひ共有させていただきたいという思いの2つから随分ずうずうしいお願いをしたと,振り返って反省することしきりの特集です.しかし,先生方のおかげですばらしいものになりました.私が診断に行き詰った時に作った格言は,「困った時は,格言集・症例集をめくれ」で,本号はそれにぴったりの豪華絢爛な内容です.本日は,お忙しいなか3人の先生にお集まりいただき,さらにこの特集を膨らませるために,経験談や日頃研修医に教えている事柄などをご披露いただこうと思います.

■私のロールモデル

藤田 まずはじめに,先生方がロールモデルとなさっている方々は多くいらっしゃると思いますが,そのなかのお一人についてお話しいただきたいと思います.岡田先生,いかがでしょうか.

岡田 まず頭に浮かぶのはグレイニー先生という,僕がニューヨークへ行ったときの最初の指導医の先生です.当時45歳ぐらいの先生で,一般内科外来の責任者でした.とても教育熱心な先生で,彼が最初に配置された病棟のattendingだったのはとても運が良かったと思っています.

 その先生のすごいところは,とにかくたくさん勉強をして,いろいろな論文を読んで,一般内科医として専門医と意見が食い違ったときに,必ずその専門医に対して,「僕は,こういう理由でこう思う」ということを言えるように勉強しているんですね.専門医が言ったことを真に受けないで,自分なりの考えをもって話し合って,その専門医の先生が,グレイニー先生が納得できる説明をすればそれで納得するし,そうじゃなければ納得しないというものを持っていました.

 僕としては,それがすごく勉強になりました.自分が何かをするときに,もちろん,自分よりも経験のある専門の先生に聞くことは大切ですが,聞く前にちゃんと自分で考えて,その考えの根拠をもって勉強しておく.その根拠を示せるほどの勉強をしているというのは,単に調べているんじゃなくて,定期的にしっかり勉強していて,もともと幅広い知識があるからできるんですね.このことはわかっているはずだ,これはデータがあるはずだという予想がつくので調べられるわけです.もともとの知識がないのに,そのときだけMEDLINEを引いたり,Google Scholarを見ても,それでは自分の都合のいい論文が出てくるだけで,本当の知識にはならないと思うんですよ.

 グレイニー先生からは,そういう勉強に対する姿勢を学んだだけではありません.彼は患者さんにも非常にやさしくて,ニューヨークだと英語のわからない患者さんもたくさんいるんだけれども,そういう患者さんにも分け隔てなく接しているのを見て,「こういう先生に診てもらえれば安心だな」というふうにも思いました.

(つづきは本誌をご覧ください)


藤田芳郎氏
慶應大学病院内科研修.その後,中部ろうさい病院,藤田保健衛生大学腎臓内科,トヨタ記念病院腎・膠原病内科で実地臨床の経験を積む.良い総合病院とは,良い研修病院のことであり,それを維持するためには良いスタッフが維持され,さらに「良い研修病院を作る」というはっきりとした目標を掲げた幹部の支えが必須であると痛感している.

岡田正人氏
ニューヨークにて内科研修後,エール大学病院にて膠原病関節炎内科とアレルギー臨床免疫科で臨床研修.その後,2006年までパリにあるコーネル大学の関連病院にてセクションチーフとして診療と教育に従事.米国リウマチ学会Senior Rheumatology Scientist Award,Merkey’s Physician Scientist Awardを受賞.著書に『レジデントのためのアレルギー診療マニュアル』(医学書院)など.米国内科専門医,米国リウマチ膠原病専門医,米国アレルギー科専門医.

須藤博氏
1983年,和歌山県立医科大学卒.茅ヶ崎徳洲会総合病院で5年間の内科研修後に,米国Good Samaritan Medical Centerなどで腎臓内科の臨床研修.1994年より池上総合病院内科,2000年より東海大学医学部総合内科.2006年4月より現職.現在の病院で良い総合内科研修システムを作ることが目下の大きな目標.

徳田安春氏
沖縄県生まれ.琉球大学卒.沖縄県立中部病院,聖ルカ・ライフサイエンス研究所臨床疫学センター,聖路加国際病院を経て,2009年より筑波大学大学院人間総合科学研究科臨床医学系教授・水戸協同病院総合診療科勤務.ハーバード大学大学院MPH,医学博士,日本内科学会認定総合内科専門医,FACP.