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【特集】

プライマリ・ケアにおける神経症候へのアプローチ

黒川 勝己(川崎医科大学総合医療センター脳神経内科)


 本特集は,プライマリ・ケアを担当する,非神経専門医の先生(勤務医・開業医・研修医)を対象に企画しました.プライマリ・ケアにおいて神経症候を認める患者に遭遇した際,非専門医の先生がどのように診療すれば良いかがわかるように,実践的な内容になっています.

 まず,総論として,非専門医は何をすべきか,どのように専門医と連携をとるべきかについて述べています.非専門医の先生は,危険な疾患を見逃さないための病歴聴取をとること,神経症候毎の必要最低限の神経学的所見をとることをしていただければと思います.病歴聴取を疎かにしての網羅的な神経診察や検査は,誤診の危険性があることを知っていただきたいと思います.

 各論は,それぞれの分野のエキスパートの先生にご依頼しました.もちろん,内容は決して専門医を対象としたものでないようにしていただいています.

 症状編として,頭痛,めまい,運動障害,感覚障害,意識消失や意識障害など,頻度の高い神経症候,あるいは緊急を要する神経症候に対して,プライマリ・ケアでどのように対応すべきかが具体的に提示されています.病歴聴取は重要なポイントであり,一方,熟練を要する神経診察は記載するとしても参考程度とし,プライマリ・ケアでも必要な神経診察手技の記載をお願いしています.

 疾患編では,脳卒中,てんかん,髄膜脳炎,Guillain-Barré症候群など,頻度の高い神経疾患,あるいは緊急を要する神経疾患について,プライマリ・ケアで知っておくべき内容が記載されています.どのような症候の時にそれらの疾患を疑うのか,プライマリ・ケアにおける対応,どのタイミングで専門医に紹介するのかなどが記述されています.

 私の周りには,非専門医でも神経症候を診ることが好きな先生が多いのですが,一般的には,非専門医は神経症状を訴える患者を診ることに苦手意識を持たれている場合が多いのでないかと思います.実際,臨床神経学は本当に難しいと思います.病歴聴取についても,膨大な知識があるからこそ的確に行えるのですし,神経診察も熟練を要するものが多くあります.そこに神経専門医の専門性があると思っています.非専門医の先生が臨床神経学を難しいと思われるのは,至極当然なことです.それにもかかわらず,神経症候を日々診ておられる非専門医の先生に,ぜひ本特集で得た知識を活かしていただければと思います.

 本特集にて,プライマリ・ケアにおいて,非専門医の先生が,これなら診ることができそうだと思っていただければ幸いです.また,脳神経内科に対する理解が深まる一助になれば幸いです.