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【特集】

循環器診療2020
どこまで攻めて,どこから引くか?

香坂 俊(慶應義塾大学医学部循環器内科)


 循環器領域ほどカラフルな選択肢を提示する領域は珍しいのではないか.ただ,選択肢が多彩であるからといってそれらすべてを選ばなくてはならないということではない.たとえば冠動脈に対するカテーテルインターベンション(PCI)は素晴らしい技術であるが,ここ10年来エビデンスの集積によって,冠動脈に狭窄があったとしても症状が安定していれば安定狭心症に対する適応はかなり「限定的」であることがわかってきた.また投薬に関しても,ランダム化研究(RCT)の結果をそのまま鵜呑みにして,いくつもの薬剤を加算的に使用していくやり方から,近年は状況によっては薬剤を「絞る」という方向に舵が切られつつある.

 この特集ではこうした現状を踏まえ,循環器内科の各領域における最新のエビデンスを紹介するとともに,それをどのように日本の現場で,「適切な形」で活用していくかというところに重点をおき,各界のトップランナーの先生方に執筆をお願いさせていただいた.

 各論文の構成としては,一部の稿を除いて,

・[Evidence from Clinical Trials]として,まずその分野に関して一般的な診療ガイドラインでの推奨に用いられる代表的なエビデンスを紹介いただいている.
・その後に[Real-World Evidence]として,もし存在すれば,その知見の一般化に関する臨床研究,大規模観察研究,あるいは減算型の研究の結果を提示いただいている.
・最後に[Recommendations (in Japan)]として,日本の現場での現実的なそのエビデンスの落としどころを提示いただいている.

 また,各セッション末の「診療の未来」という稿では,各分野(予防医療,心不全,虚血性心疾患,不整脈)の次の10年間の展望について特に規定を設けずご執筆いただいている.

 本特集の内容が,現代循環器診療に関わる先生方にとって少しでもお役に立てば幸いである.