目次詳細・ご注文はこちら  電子ジャーナルはこちら

【特集】

真夏の診察室

平島 修(徳洲会奄美ブロック 総合診療研修センター)


 2019年6月,このテーマで特集企画が採用された際に執筆いただいた先生方へ,『経済・暮らしが豊かになり,経済のグローバル化,格安航空会社の発展とともに,誰もが簡単に海外旅行が可能となった.この30年で約3倍の約2,000万人,8月が最も多く,約200万人が海外へ出かける.逆に海外からの旅行者も年間1,800万人と10年前の3倍,やはり8月が最も多く200万人が日本へ訪れる.ある国でパンデミックが起きた疾患はいつ日本にも持ち込まれ兼ねない時代となった.気候,社会情勢を踏まえ,夏に遭遇する疾患の適切な対応,患者への正しい情報をまとめていただきたい』とお願いした.

 編集作業を進めていた2020年1月,中国より流行が始まったCOVID-19により世界が一変した.WHOですらも感染拡大予測ができず,3月には爆発的に世界中に広がることとなった.その一因にはグローバル化の影響が大きかったと言わざるを得ない.医療者はある日突然,命の危険にさらされるかもしれない,という感染の恐怖のなかで戦う聖職となった.そして3月20日,沖縄の海の前で予定していた座談会はテレビ会議で行うことになった.

 患者は,予定された疾患の名札を付けて現れることはなく,難解症例も緊急症例もある日突然やってくる.適切に対応するためには,起こるかもしれない事態を予測しつつ日々の臨床をこつこつとこなしていくことである.この特集では,気候変動へ病院がどのように対応していくべきか,熱中症に対してはもう一度学び直してほしい病態と診療所から救急病院までそれぞれの領域での注意点を,夏に管理が難しくなる特に心血管疾患・糖尿病・皮膚疾患,そして夏特有の感染症・食中毒・レジャーに関連した疾患について,分野を問わず総合内科医・総合診療医が対応すべき領域での重要なポイントをまとめていただいた.本特集で準備体操をしっかりしていただいて,真夏の診察室へ飛び込んでいただきたい.

 われわれ医療者も地球に生きる人間の1人であることを忘れてはならない.人類の発展とともに生じた気候変動は,これからも災害や感染症などさまざまな人類の存続を脅かす影響を与えると考えられる.気候変動や社会情勢の変化に対して,医師1人ひとりができることを考えるきっかけになればと願っている.