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【特集】

運動・スポーツ 内科
内科医に求められるスポーツ医学とは

田中 祐貴(ゆうき内科・スポーツ内科/日本スポーツ内科学会)


 近年のさまざまなスポーツにおける日本人選手の活躍はめざましく,世間の競技スポーツに対する関心は高いものがあります.一方で健康スポーツが,メタボリック症候群やロコモティブ症候群の予防に有用であることは明らかです.今回『運動・スポーツ×内科 内科医に求められるスポーツ医学とは』をテーマに,運動やスポーツと内科疾患の関連に焦点を当てた特集を編集させていただきました.

 私はまさに『運動・スポーツ×内科』を実践する「スポーツ内科」をメインの仕事にしています.スポーツ内科は,主に①運動・スポーツにより生じる内科的問題の予防や治療を行う医学,②生活習慣病などの内科疾患の予防や治療に運動・スポーツを積極的に活用する医学から成ります.本特集においては,①②それぞれの領域のテーマを幅広く扱うよう努めました.

 すべてのライフステージにおいて運動・スポーツは,健全な心身の発達(小児期)から生活習慣病,悪性腫瘍,認知症の予防(老年期)に至るまで,さまざまな医学的効果をもちます.生活習慣病や心臓病を抱える患者が,安全に運動に取り組み病態の改善や機能の維持を図ることをサポートする必要性は多くの内科医が理解しているところと思われます.今回は多くの専門家から,具体的な実践方法を詳説いただきました.

 適度な運動が健康に良いのは明らかですが,一方でアスリートや熱心な運動愛好家は,本当に皆「健康」と言えるのでしょうか.実際には,倦怠感や息切れなどの症状を抱えていたり,記録の伸び悩みやスランプなどの不調を感じたりしながら競技を続けているアスリートは少なくありません.ここにもスポーツ内科の出番があり,「競技アスリートに対するスポーツ内科」についても解説を加えました.

 私は一般社団法人日本スポーツ内科学会の代表を務め,スポーツ内科の啓発に努めています.医学雑誌において『運動・スポーツ×内科』というテーマでこれほどまでに充実した特集が組まれたことは初めてではないでしょうか.この特集をきっかけに,積極的にスポーツ内科診療を実践する内科医が増えることを期待しています.

 新型コロナウイルス感染症の影響で,東京オリンピック・パラリンピックは延期となり,全国中学校体育大会や全国高等学校総合体育大会も中止となった今だからこそ,スポーツ界にも強くエールを送りたいと考えます.多くのアスリートが,スポーツ内科的な考え方を習得・実践し,自身の身体と向き合い,パフォーマンスを向上させ,新たな機会にそれぞれの目標を達成してくれることを望みます.

 最後にこの場をお借りして,本特集にご執筆いただいた先生方,早狩選手,医学書院編集部の皆様に深謝いたします.