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【特集】

今の流れに乗り遅れない!
プライマリ・ケアでの呼吸器疾患の診かた,薬の使いかた

中島 啓(亀田総合病院 呼吸器内科)


 プライマリ・ケアのセッティングにおいて,咳,胸痛,呼吸困難など呼吸器系の主訴で受診する患者は多い.呼吸器疾患は診療の幅も広く,肺炎・結核などの感染症,肺がんなどの悪性腫瘍,間質性肺疾患,COPD・気管支喘息などの閉塞性疾患,アレルギー性疾患,じん肺など職業性肺疾患,睡眠時無呼吸症候群まで内科のさまざまな領域を含んでいる.さらに,重症肺炎,間質性肺炎急性増悪などの急性期病態から,COPDや気管支喘息の安定期の管理,肺がん終末期の緩和医療に至るまで,遭遇する病態や提供する医療も,患者の病状や病期によって変わる.よって,呼吸器診療には「肺を通して体全体を診る」という全人的医療の実践が重要である.

 呼吸器診療は日進月歩であり,目まぐるしいスピードで新薬の開発が行われている.近年登場した代表的な薬剤には,肺がんにおける免疫治療薬,喘息に対する生物学的製剤,COPDに対するトリプル吸入製剤がある.このような背景から,診療ガイドラインの改訂も頻回に行われており,管支喘息・COPDの領域だけを見ても,2017年に『喘息とCOPDのオーバーラップ 診断と治療の手引き』,2018年に『難治性喘息 診断と治療の手引き』『COPD診断と治療のためのガイドライン2018』が日本呼吸器学会から出版された.海外の喘息(GINA)やCOPD(GOLD)のガイドラインも毎年改訂されており,呼吸器内科の専門医でさえ日々アップデートが大変な状況である.

 呼吸器薬を使いこなすには,各呼吸器疾患の診療における「今の流れ」を理解しておく必要がある.また呼吸器薬は,経口薬・点滴薬・注射薬・吸入薬など投与法も多彩であり,投与法やデバイスによる違いも知っておく必要がある.もちろん,起こりうる副作用も理解しておくことも大切である.患者の高齢化が進んでいるなか,並存疾患を考慮したうえでの薬剤選択も必要である.

 そこで本特集では,プライマリ・ケア医や一般内科医におさえてほしい呼吸器疾患の診かた,薬の使いかたについて,肺炎,COPD,喘息など,各呼吸器疾患の専門家に,「今」の考えかたを踏まえてご解説いただいた.現場に即した内容を目指すため,診療現場を担う新進気鋭の呼吸器内科医・感染症科医を主体に執筆していただき,プライマリ・ケア医が日常臨床で使いやすい実践的内容となっている.読者には,今の流れに乗り遅れない,呼吸器診療のアップデートを行っていただければ幸いである.