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【特集】

枠組みとケースから考える
消化器薬の選び方・使い方

野々垣 浩二(大同病院)


 枠組みを考えるとは,問いに答えるために必要な論点のセットを考えるということである.今回の特集の問いは,「消化器疾患に対して薬をどのように選び,投与すべきか?」である.この問いに対する論点を具体的に挙げると,「投薬するにあたり主訴は何か,確定診断前それとも確定診断後なのか?」「診療場面は? 救急外来それとも一般外来,病棟?」「処方しようとしている薬のデメリット=副作用は何か?」などのように,実際に投薬する前に,抜け漏れがないように必要な論点=枠組みを考えることが必要である.患者を目の前にして,たまたま知っている薬を漠然と投与していないだろうか? 手元にある情報のみで対応していないだろうか? TPO(time:時,place:場所,occasion:状況)を意識し,どの薬をどのように投薬すべきかについて,処方医の立場に応じて知識の整理をすることは重要である.

 消化器薬は,誰が,いつ,どこで,どんな薬を,どのように処方すべきであろうか? 消化器薬を処方する立場で考えると,研修医,非専門医(開業医・勤務医),専門医に分けられるだろう.診断前,診断後で症候に応じて使用する薬も異なるであろう.消化器病患者を診察する場面はどうだろうか? 救急外来,一般外来,病棟,最近では在宅診療まで多くの消化器薬が処方されている.どんな場面で,どのような根拠をもって,そして処方する医師が,研修医なのか,非専門医なのか,専門医なのかによってカバーすべき知識の整理が必要である.消化器内科医の守備範囲は非常に広い.疾患分類でいうと,上部・下部消化管,肝疾患,膵・胆道疾患に分類される.消化器内科医でさえ,このすべての分野を網羅してup dateするオールラウンドプレーヤになることは難しい.

 多くの内科医は,日常の忙しい業務に追われ,視野狭窄に陥っている可能性がある.処方の根拠は十分考慮されているだろうか? 処方のリスクは考慮されているだろうか? 今回の特集では,枠組みを十分意識し,具体的な症例を通して,さらには診療ガイドライン,エビデンスなど文献的考察により,根拠をもってご解説いただく.自分が置かれた立場で押さえておくべきポイントだけでも熟読し,明日からの診療に役立てていただければ幸いである.