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【特集】

どんとこい! 内科医が支える
エンド・オブ・ライフ

柏木 秀行(飯塚病院緩和ケア科)


 エンド・オブ・ライフと聞いて,どのような印象を受けるだろうか? 日夜,診断と治療に取り組む内科医にとって,エンド・オブ・ライフが話題となる患者に対しては,できることが少なく感じてしまいがちである.であれば,自分以外の誰かに任せて,自分は医学に専念すればよいのだろうか? 私はこれからの内科医はエンド・オブ・ライフに無関心ではいられないし,むしろやりがいを感じながら取り組んで欲しいと考える.

 総務省の報告によると,2016年10月時点で65歳以上の高齢者人口は3,459万人となり,総人口に占める割合(高齢化率)も27.3%となった.そのなかで厚生労働省の死亡数の推計は,2015年時点で120万人強であったものが,2040年には160万人を超えるとされる.医療は社会システムを支えるインフラとしての役割があり,医療者の役割はますます大きくなると考える.これまで経験したことのない多死社会において,医療者に求められることは何なのだろうか? そして,医療者側の準備は果たして十分なのであろうか?

 現在,この社会の変化に対応できる人材を育成すべく,さまざまな取り組みがなされている.厚生労働省は「人生の最終段階における医療体制整備事業」において,個人の尊厳と意思が尊重される医療提供ができる人材育成に取り組んでいる.さらに,緩和ケアやエンド・オブ・ライフに関わる医療者に対する教科書や,診療の技をまとめたマニュアルなどは増えた.しかし,単純計算で30%以上も増加する死亡者数に対応できるかどうかは誰にもわからない.ただ確実なのは,この時代に医療者であるということは,この社会課題に真正面から向き合い,一人ひとりの力は微力であったとしてもできることを目の前の患者に提供していく必要があるということだ.

 本企画では,「一般内科医や研修医を含めた若手医師の提供する,プライマリ・ケアの一環としてのエンド・オブ・ライフケアをこれからどのように作っていくか?」を根本の問いとして設定している.そして,各項目の執筆者の皆様には,それぞれのトピックに関する実践的な知見を中心に執筆していただいた.また,座談会では,この領域に長く関わり,第一人者として取り組んでこられたお二人に協力いただき,今後のエンド・オブ・ライフケアを担う人材に期待することをテーマに,思いの丈を語ってもらった.本企画を通じて,エンド・オブ・ライフに関わり,日々奮闘している皆様に少しでもお役に立てることができれば本望である.