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【特集】

ここさえ分かれば
輸液・水・電解質

長浜 正彦(聖路加国際病院腎臓内科)


 水・電解質という分野は,最新の治療や新たな知見を常にアップデートしなければならない日進月歩の領域ではない.しかしながらこの領域の書籍やマニュアル本は多く,雑誌でも定期的に特集が組まれるトピックである.その理由は何であろうか? 理由の1つに,多くの人がこの分野を「理解しにくい」「とっつきにくい」と感じていることが挙げられるであろう.水・電解質領域を敬遠する人は少なくなく,何を隠そうこの私も学生のときには水・電解質は苦手どころか嫌いであったし,できれば避けて通りたいと思っていた.

 そんな私がなぜこの分野に興味をもったかを振り返ると,些細なことがきっかけである.非常に難解に感じていたことが,些細なことをきっかけに飛躍的に理解が深まり,苦手意識が氷解することを経験した人は少なくないであろう.水・電解質領域のすべてが複雑怪奇なわけでなく,大勢がつまずくポイントがある.要は,そのポイントを乗り越えるきっかけ作りが重要なのではないだろうか.

 そこで本特集では,とっつきにくい輸液・水・電解質の「ここさえ分かれば」を集めて理解を深めるきっかけを作ることを目的とした.したがって,系統的,網羅的な内容や序列をあまり重視するのではなく,理解のきっかけになるであろう疾患概念や病態生理に焦点を絞って企画した.前半で「ここさえ分かれば」を集め,後半では特殊な状況(各論),専門家でも読み応えのあるcontroversyにも挑んでもらう構成とした.座談会では「水・電解質はどう学ぶ」という内容で,苦手意識が比較的高いと思われる水・電解質領域の学び方について議論を深めたが,ここからも「ここさえ分かれば」のヒントを見つけていただければと思う.

 本特集が,水・電解質領域の苦手意識が少しでも薄まる,あるいはもっと好きになるきっかけとなれば幸いである.