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【特集】

気管支喘息・COPD診療に強くなる

青島 正大(亀田総合病院呼吸器内科)


 現在,慢性閉塞性肺疾患(COPD)は主に喫煙と関連する生活習慣病の1つと位置づけられており,日本人の死因の10位,男性の死因の7位を占めているが,実際に診断され適切な治療を受けているのは一部であり,多くのCOPD患者は適切な診療を受けていないと想定されている.一方で気管支喘息による死亡(いわゆる喘息死)は吸入ステロイド(ICS)の普及により急速な減少を遂げたが,喘息死ゼロを目指すキャンペーンにもかかわらず,いまだゼロにはなっていない.実臨床では気管支喘息か,COPDか判断に迷うケースも少なからず存在し,日々の診療で悩むことも少なくない.

 COPDも気管支喘息も,ともに最もcommonな呼吸器疾患であり,治療は慢性期のコントロールと急性増悪時の治療とを分けて考えるというコンセプトは共通しているが,治療薬物の主体は異なる.しかしながら重症例のコントロールには共通して吸入ステロイド(ICS),吸入長時間作用性β2刺激薬(LABA),吸入長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の3剤によるいわゆるトリプルセラピーが推奨されてきた.ところが逆にCOPDに対するICSの使用は肺炎のリスクを高めるということも知られており,増悪歴を有するCOPDにはICSを併用すべきであるか否か矛盾に満ちた部分も多く,専門医でも迷う機会が多い.本文中でも述べられるが,近年の大規模ランダム化比較試験によりCOPD診療ガイドラインではICSの位置づけが大きく変わった.COPD,気管支喘息ともにガイドラインが定期的にアップデートされていくため,これらの改訂にcatch upしていくことは必ずしも容易ではない.さらに両者の境界とも言える喘息合併COPD(asthma COPD overlap:ACOに呼称が統一される見込み)の存在が治療をさらに混沌とさせているのが現在の診療の実情であろう.

 新しい概念として気管支喘息・COPD双方に「フェノタイプ」が導入され,また他の多くの疾患と同様に「バイオマーカー」の研究も進んでいる.今後「バイオマーカー」に基づく「フェノタイプ」の判定ができれば気管支喘息・COPDともに現場において適切な診療がより容易となる可能性も期待されている.

 本特集ではフェノタイプ,バイオマーカーを意識しつつ,気管支喘息,ACO,COPDについて専門家にわかりやすく解説していただくことを目指した.Common diseaseと位置づけられている限り,診療に一般内科医が関与する場面は決して少なくない.この両者の診療に強くなっていただくのが,この企画の目標である.