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【特集】

おさらい腎疾患
明日から役立つアプローチの基本

安田 隆(吉祥寺あさひ病院内科)


 多くの先生から「腎臓は難しい」と言われます.私も学生時代には腎臓の講義をまったく理解できませんでした.その後,腎臓を専門に診療していくにしたがって,それぞれの疾患概念の難解さや,生理学などの基礎と実際の臨床とがうまくかみ合っていない点など,腎疾患診療を行う際にも,また若手を教育する際にも多くの問題点があることに気づきました.

 近年,腎機能障害や蛋白尿を有することが末期腎不全への進行ばかりでなく,心血管障害の発症や生命予後と関連することが明らかとなりました.さらに,このような異常を有する症例が膨大な数に上ることが明らかとなり,腎疾患の診療は一般医家にとって避けて通れないものとなってきています.加えて,「慢性腎臓病(CKD)」や「急性腎障害(AKI)」といった新しい疾患概念が登場しています.これらは誰でも容易に理解できる疾患概念となっていますが,実際にどのように診療で使いこなせばよいのか,という点についてはまだまだ十分には理解されていないと思います.

 これまで日本腎臓学会などを通して,医学生・研修医・一般医家の方々,さらに一緒に働くメディカルスタッフの方々にも,腎疾患診療で重要なポイントを理解し,診療で使いこなせる知識として身につけていただけるよう,数々のセミナーなどを多くの先生方とともに行ってきました.同時に,多くの方々に腎疾患に慣れ親しんでいただくため,実臨床で役立つ考え方を身につけるにはどのような教育を行ったらよいかを検討してまいりました.

 今回,「おさらい腎疾患─明日から役立つアプローチの基本」を企画させていただくにあたって,これらの先生方に執筆を依頼し,さまざまな腎疾患について,知っておくべき重要なポイントとその考え方をわかりやすく記載していただきました.腎疾患診療の第一は腎機能障害と血尿・蛋白尿といった尿異常への対応です.本特集では,これらの異常への基本的な対応から,さまざまな側面から分類された腎疾患への対応,さらに腎臓の働きにより調節されている体液・電解質・酸塩基平衡異常への対応も取り上げました.また,一般医家の先生方も遭遇する可能性が高い,透析および腎移植患者における診療時の留意点も取り上げました.多くの腎疾患に対して自信をもって対応していくことができる内容となったと自負しています.

 最後に,腎疾患に関するこれまでの教育活動などが井の中の蛙とならないよう,米国で腎疾患診療と教育に長らく携わっている三枝孝充先生に,日本と米国との教育や診療の違いについてご執筆いただきました.米国との違いを知ることで,何らかの診療の一助となれば幸いです.

 本特集を読まれ,さらに実臨床でご活用いただいて,「腎疾患の診療は怖くない」と感じていただけたら,編者にとってこのうえない喜びです.