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【特集】

肺炎への最新アプローチ
ジェネラリストの立場とスペシャリストの視点から

関 雅文(東北医科薬科大学病院感染症内科)


 肺炎は,いよいよわが国の死因の第3位となり,超高齢社会を迎えた昨今では,誤嚥性肺炎をはじめとして,一般診療でも避けては通れない疾患群です.肺炎に対しては,従来の市中肺炎や院内肺炎のほか,医療・介護関連肺炎(NHCAP)の概念も登場したため,その対応,すなわち治療および予防の重要性から,両者のバランス,そしてワクチンや口腔マネジメントも含めた具体的アプローチの探求が,医師以外の各職種も巻き込んで進められてきています.

 一方,比較的若年者における重症肺炎へのアプローチも重要です.例えば,インフルエンザに関連した2次性細菌性肺炎の重症化が改めて知られるようになってきましたが,抗菌薬以外での対応,すなわちステロイドや抗凝固薬,ICUでの呼吸管理も含めた多角的かつ集学的な治療戦略が必要であることは,現場の医師が強く感じていることです.このように,肺炎はきわめてジェネラルな疾患であるとともに,その診療においては,スペシャリストによる的確かつ迅速な対応が求められてきていると言えます.

 私たちは,肺炎患者にアプローチする際に,まずは病態を把握しなければなりません.発症場所による分類が便利ですが,発症様式そのもの,すなわち誤嚥などの患者か,人工呼吸器や免疫抑制薬を使っているような患者かで,対応は大きく変わってくるでしょう.もちろん,予後=重症度を判断することは,治療の場所を決めるためにも最初に求められることです.この後に原因菌が何かを考える必要があります.グラム染色や培養,薬剤感受性検査を基本として,最近はさまざまな迅速診断キットや最新鋭の蛋白・遺伝子レベルでの検査法も導入され始めましたので,それらの解釈を勉強しておく必要もあります.

 治療にあたっては,多くの種類の抗菌薬が存在しますが,同系統の抗菌薬でも実際はまったく使い方が異なるものがありますので,もう一度確認したいと思います.さらに,肺炎・呼吸器感染症における最新のエビデンスが続々と登場してきています.重症肺炎への抗菌薬以外のさまざまな治療薬や,細菌以外の病原体のことも知っておく必要があります.敗血症の定義変更や,耐性菌の解釈やアプローチも変わりつつあり,インターネットを用いた最新のサーベイランスのシステムなどとともに,トピックとして押さえておきたいものです.

 いよいよ新しい肺炎ガイドラインの登場も期待されています.今回は,ジェネラリストの立場から肺炎を俯瞰しつつ,スペシャリストの視点から,気鋭の先生方に診療を行ううえで特に注意すべきポイントを,最新の情報をベースに紹介していただきたいと考えています.