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【特集】

内分泌疾患を診きわめる

田上 哲也(京都医療センター内分泌・代謝内科)


 “内分泌は難しい?” できたら避けて通りたいというのが本音かもしれない.しかし,昨今の生活習慣病に関する多くの診療ガイドラインでは,まず続発性・内分泌性の疾患を否定してから治療に進まなければならないことになっている.少なくともスクリーニングアウトの方法は知っておく必要があるのだ.「とりあえず薬を出しておこう」,はなから「専門医に任せよう」と言ってはいられない.もちろん,対症療法と鑑別診断が同時進行であっても構わない.しかし,まず疑わないことには,たとえ専門医といえども,正しい診断はできない.

 “内分泌は面白い!” 海堂尊氏の小説に「不定愁訴外来」という診察室が出てくる.そこを訪れる患者の一部は内分泌疾患が原因かもしれない.ホルモン異常による疾患には不定愁訴と一蹴されがちな症状も少なくないが,必ずヒントとなる特徴的な症候が潜んでいる.それを手掛かりに鑑別を進め,確定診断に至ったとき,医師だけでなく患者・家族にとっても感激はひとしおである.

 ほかの分野同様,内分泌という小さな領域にも,臓器ごとの専門家が存在する.本特集ではそれぞれの専門医に面白さを伝えてもらっている.まず,下垂体は脳にぶら下がる小さな器官であるが,その影響は絶大で,多くの下位ホルモンを制御するホルモンの司令塔だ.その腫瘍化は先端巨大症やCushing病などの特徴的な症候を引き起こす.次に,甲状腺は希少疾患が多い内分泌分野のなかではポピュラーな存在だ.Basedow病や橋本病は患者数が多く,誰もがよく知る疾患で,メディアでもしばしば取り上げられる.逆に,副甲状腺は甲状腺の陰に隠れる極小器官だが,カルシウム調節におけるその存在意義は大きい.疑問に思ったことはないだろうか─副甲状腺機能亢進症では骨粗鬆症になるのに,なぜ骨粗鬆症の治療薬として副甲状腺ホルモンが使われるのかと.最後に,副腎もその名の通り腎臓の上に乗っかる臓器だが,そこに発生する腫瘍は,かの有名なCushing症候群や褐色細胞腫,原発性アルドステロン症を引き起こす.

 本特集で,一般医家には内分泌性の高血圧,肥満・糖尿病,骨粗鬆症などの除外方法を,若手医師には「内分泌がいかに面白いか」ということを知っていただければ幸いである.