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【特集】

胸部画像診断
症状や身体所見からのアプローチ

芦澤 和人(長崎大学大学院医歯薬総合研究科 臨床腫瘍学)


 全身のあらゆる臓器の疾患において,画像診断は必須の検査法である.一般外来診療において病歴聴取や診察によって呼吸器疾患や循環器疾患が疑われる場合,通常第一に行うべき画像検査は,胸部単純X線撮影である.胸部画像診断の第一段階であり,適切な診断・治療につなげるためにも,その正確な読影,異常影の解釈がきわめて重要である.この段階での見落とし,誤診は,患者の早期治療の機会を逸し,引いては患者の予後に影響を及ぼしかねない.胸部単純X線写真で異常影が指摘可能な場合,肺水腫や市中肺炎のように胸部単純X線写真で画像検査が完結し治療が開始される場合もあるが,その他の疾患においては引き続き胸部CTが施行される.多くの場合,胸部CT検査で画像診断は終了するが,必要に応じて,MRI検査やFDG-PET/CTに代表される核医学検査が追加される.また,胸部単純X線写真で異常影が指摘できない場合でも,例えば免疫不全患者の日和見感染疑いのように,臨床的に病変の存在が強く疑われる場合は,時期を逸することなく胸部CTが施行されることが望ましい.

 国内には,胸部単純X線写真や胸部CTに関する素晴らしい教科書が存在するが,その多くは,疾患別や画像パターン別に記載されている.本特集では,一般内科の研修医・勤務医・開業医の方々の実臨床を想定し,これまでと異なった観点から画像所見を記載した.すなわち,患者の呼吸器症状や他臓器の症状・身体所見・病態,あるいは患者背景に注目して,commonな疾患や稀だが臨床的に重要な疾患を取り上げて症例を呈示し,行うべき画像検査,画像所見の特徴,診断のポイントに関してコンパクトに要点をまとめることを心がけた.昨今のMDCTやMRI,FDG-PET/CTなどの画像機器の進歩には目覚ましいものがあるが,特にCT検査は短時間で施行できるようになったため,その適応を考慮することなく安易に行われている現状がある.また,若い医師において胸部単純X線写真の読影が疎かにされている傾向があることも否めない.本特集で胸部単純X線写真の役割を再考していただき,読者の実臨床において役立つことを切に願うばかりである.

 最後に日常臨床で多忙を極めるなか,執筆をご快諾いただいた先生方にこの場をお借りして深くお礼を申し上げる.