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【特集】

外来で診るリンパ腫・骨髄腫
治癒または長期共存を目指して

飯田 真介(名古屋市立大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学分野)


 成熟リンパ系腫瘍は,人口の高齢化に伴い,年々罹患者数と死亡者数が増加している.同時に,21世紀になって病態の理解と治療法が著しく進歩した領域であり,現在もなお,分子病態に基づく新規薬剤が毎年のように登場している.特にびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫は抗CD20抗体であるリツキシマブの登場により治癒率の向上が認められ,またHodgkinリンパ腫においては治癒率だけでなく,二次がんの回避を含めたより長期間のQOL維持が重視されるようになってきた.

 それに対して,例えば多発性骨髄腫においてはプロテアソーム阻害薬と免疫調節薬の登場により,生存期間が中央値で3年から5~6年に延長し,また濾胞性リンパ腫に代表される低悪性度リンパ腫にも新規薬剤が次々に登場し,10年を超える生存者も増えているが,まだ治癒を期待するのは難しい現実もある.したがって,患者が自宅で過ごす時間を大切にしつつ,病気と長期間にわたって共存してゆくことが重視されるようになってきた.

 すなわち,成熟リンパ系腫瘍の治療は,その主体が入院から外来へと移行しつつある.それに伴い,外来での患者指導や化学療法室の充実が重要である.加えて,突然の感染症に対する対応や生活習慣病などの合併症管理,化学療法終了後の治療関連有害事象のケアや経過観察などにおいては,血液・腫瘍専門医と,地域の一般内科医やかかりつけ医との情報共有を含めた連携の重要度が増している.

 最近の治療開発のトピックスとしては,次世代シークエンス法により見出された新たな遺伝子変異に基づく分子標的薬開発が進んでいる.さらに,抗PD-1/PD-L1抗体などの免疫チェックポイント分子を介した免疫賦活療法や,CD19に対するキメラ抗原受容体発現T細胞療法(CAR-T療法)は,リンパ系腫瘍に対して高い治療効果を発揮することが判明した.

 このように,今後もますます効果的な治療法の登場が期待される分野である.治癒を目指す疾患と長期にわたる腫瘍との共存を目指す疾患に分けて,血液・腫瘍専門医のみならず,一般内科医や若い医師にも理解を深めていただき,成熟リンパ系腫瘍に罹患した患者さんに少しでもフィードバックしていただければ幸いである.