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【特集】

外来で出会う呼吸器commom疾患
診断と治療のエッセンス

松瀬 厚人(東邦大学医療センター大橋病院呼吸器内科)


 呼吸器系は外界に直結する臓器であり,人間が生きてゆくために日々行う呼吸によって,多くの有害物質が侵入します.呼吸器系に吸入される有害物質には,ハウスダストや花粉など普通に生活していては防ぎようのないものから,タバコのように本来吸入しなくてよいものまで多岐にわたり,呼吸器には感染,アレルギーから癌といった多種多様な疾患が発生することになります.加えて,肺は加齢の影響も受けやすい臓器です.腎機能と同様に,肺機能は,健康人でも年齢とともに低下してゆきます.世界でも有数な高齢先進国であり,先進国の中でも喫煙率が高いわが国では,これからも呼吸器疾患が急増してゆくことが容易に予想されます.

 代表的な呼吸器疾患についてみてみると,抗菌薬の進歩により一旦は順調に死亡率が低下していた肺炎も,耐性菌の出現や高齢化の影響で,今や悪性腫瘍と循環器疾患に次いで日本人の死亡原因の第3位となりました.加齢と喫煙が関連する呼吸器疾患である慢性閉塞性肺疾患患者(COPD)の患者数や死亡率は低下する気配もありません.肺癌も新しい診断法や治療法が開発され,昔に比べると早期発見例や進行例でも長期生存例が少しずつ増えてはきましたが,いまだに手ごわい癌の代表格となっています.治療の進歩によって,喘息発作で亡くなる患者さんは随分減りましたが,咳だけが何週間も続く咳喘息の患者は増え続けているようです.

 このように多彩な呼吸器疾患は,呼吸器を専門としない内科医にとっても,外来で遭遇する機会が多いと考えられます.本特集では,専門医が患者さんを入院させて行う特殊な検査や治療ではなく,非専門医が外来で行える診療や専門医へ紹介するタイミングに焦点を当てました.また,座談会では,多くの患者を第一線で外来診療する開業医の立場と,そこから紹介を受ける大学病院の専門医という両方の立場から,わが国の呼吸器診療の現状と問題点について議論がなされました.本文では,まず総論として,common症状,検査法,治療法について述べられています.各論では,common疾患の外来での対応と専門医への紹介のタイミングを主に述べていただきました.

 呼吸器を専門とされない先生方にとって,多種多様な呼吸器疾患の適切な対応をマスターするのは,大変な時間と労力を要します.本特集で呼吸器の最新の診断法や治療法のエッセンスを知っていただき,できれば傍らに置いて,日々の外来診療のお役に立てていただければ幸いです.