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【特集】

救急疾患,重症はこうして見極める
いつまでもヤブと思うなよ!

山中 克郎(諏訪中央病院内科総合診療部)


 英国の詩人 ロバート・ブラウニング(1812~1889)の詩に次の言葉があります.

 Grow old along with me !
 The best is yet to be,
 The last of life, for which the first was made.
 「共に老いてゆこう
 いちばんいい時はこれからだ
 人生の最後,そのために最初が作られたのだ」

 中高年になると細かい字を読むのが辛くなりますし,勉強してもなかなか記憶に残りません.気管挿管や腰椎穿刺などの手技はどんどん若者に敵わなくなってきます.しかし,診断まで研修医に負けるなんて悔しくないですか.

 最近,友人である小野正博先生(有隣病院)達とおじさんのためのFacebook勉強会『野獣クラブ』を作りました.「野獣のごとく,むさぼるように勉強を続けよう」が合い言葉です.「すごく勉強になる症例検討会が○○病院であるよ」,「今日はこんなグレートなレクチャーを聞いたので要約を送るぜ」と互いに刺激しながら,医学を学び続けています.いままでの臨床経験を生かしながら,中高年医師も生涯教育を続け,さらに高みを目指すことが重要です.

 故 田坂佳千先生(田坂内科医院)は自らを「万年研修医」と呼び,総合診療系メーリングリスト(TFCメーリングリスト)を立ち上げ,全国の志高い医師と共に勉強を続けられました.専門以外の領域で,いかに医学知識をアップデートしていくかが重要です.勉強にはコツがあり,情報化社会では有益な情報を知らないのはもったいないです.楽チンに勉強する方法があるなら,多少お金はかかっても使わない手はありません.私はスマートフォンのアプリであるEvernoteやDropboxをよく使っています.自分の記憶力の衰えを補うために,重要と思われる論文やメモはこれらのなかに保存しています.こうすれば,インターネット環境下ならどこにいてもスマートフォンを用いて復習ができます.記憶の定着には反復学習を繰り返す以外に良い方法はありません.

 勉強に対するモチベーションの維持には,刺激を与えてくれる人達と交流することが必要です.若手医師と交流することは特に刺激になります.そして最も効率がよい勉強法は自分が学んだことを人に教えることです.確実に記憶に定着します.村上龍が「55歳からのハローライフ」で書くように,50代はこれからの人生を考える大切なターニングポイントです.一緒に情熱的に学び続けませんか.適切な診断と迅速な治療を行い,一人でも多くの患者さんを幸せにしましょう.

 本特集では,救急や重症疾患に対するあなたの診断能力をチェックします.どこか苦手な領域はあるでしょうか.私は実践的な症例問題をどんどんこなすスタイルの勉強法が好きです.受験時代にたくさんの数学の問題を繰り返し解くトレーニングを続けると,そのうち問題を見るだけで「こうすれば解ける」と解答への道筋が見えてきませんでしたか.パターン認識を鍛えることは大切です.また,「私の勉強法と若手医師の育て方」の章では臨床能力の優れた指導医の皆さんに勉強法を聞いています.受験時代には合格体験記を読むのが大好きでした.いろいろな人の勉強法を参考にして,自分に合った勉強のやり方を確立しましょう.

 最後にブラウニングの名言で締め括りたいと思います.

 「成長せずにどうしてこの世に存在する意味があるだろうか」