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特集

ここが知りたい循環器診療
パールとピットフォール

前村 浩二(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学)


 循環器疾患の多くはcommon diseaseですので,その多くは一般内科外来で診療することになります.あるいは他科の専門医が自分の専門外来で,併存する循環器疾患も同時に診療する機会もあります.さらに,交代で内科当直を担当する医師や,first callを担当する若手医師が,循環器疾患の救急患者に遭遇する機会も多いと思います.そのため内科医にとって循環器疾患は必ず遭遇する疾患であり,誰もが診療ができる必要のある疾患です.

 米国のように,かかりつけ医が広範な疾患をカバーして,専門医が高度に専門的な診療のみを担当する体制も一つの方向性としてあり,わが国においても,より広い疾患をカバーできる総合診療医の養成が叫ばれています.しかし,患者の専門医指向が強いわが国の現状では,各科の専門医が自分の領域のみでなく,より広い疾患もカバーできることが求められています.

 しかし循環器疾患の診療では,瞬時の判断が必要なことが多く,また見逃したら重篤な病態に陥ることもあり,しばしば敬遠されがちであるのが実情です.昨今の,嘔気のために救急外来を受診した患者であっても「救急外来で心筋梗塞を見逃して告訴」などの報道が,それに拍車をかけている面もあります.救急外来で診療する際は,急を要する疾患なのか,ゆっくり鑑別していけばよい疾患なのかの判断がまず重要です.患者を帰してよいのか,入院させるべきかで迷うことも多くあります.また急を要する疾患であれば,いたずらに時間をかけることなく循環器専門医への引き継ぎが必要ですが,いつ循環器専門医にコンサルト,あるいは専門機関に搬送すべきか迷うことも多くあります.循環器疾患に対する苦手意識を克服するためには,それらを見抜くポイントを要領よく押さえることが重要になってきます.

 本特集では,研修医,総合内科医,他科専門の内科医が救急外来または一般外来で遭遇する機会の多い症候,疾患に絞って,その診療のポイントを解説していただきました.特に「ここが知りたい循環器診療―パールとピットフォール」と題して,豊富な経験をもつ執筆者に,その経験のなかから得られたクリニカル・パールと,診療上よく陥りやすいピットフォールを論文の冒頭に示していただくことで,読者に診療のコツを効率よく理解していただけるようにしました.本特集で少しでも循環器疾患に対する苦手意識が薄れ,守備範囲の広い内科医を目指す一助となれば幸いです.