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特集

内分泌疾患に強くなる

和田典男(市立札幌病院糖尿病・内分泌内科)


 内分泌疾患は,消化器疾患や循環器疾患などと比較すると研修医や一般内科医から馴染みにくいという印象をもたれているように思います.その原因として,内分泌疾患が比較的稀で実際の症例を診る機会が少ない,疾患の種類が多い,どの検査を選択してよいかわかりにくい,負荷試験の判定が難しいといったことが考えられます.しかし,近年,内分泌疾患が増加してきているのも間違いありません.それはホルモン測定や画像診断の進歩や普及によるものと考えられます.

 健診や人間ドックが発達し,CTやMRI,超音波検査の機器が世界一普及し,血液検査の値段が安い日本では,内分泌疾患またはそれを疑う異常所見が偶然みつかる機会が数多くあります.腹部CTや超音波検査では副腎腫瘍がみつかることがあり,また,生活習慣病患者に対して動脈硬化の評価のために頸動脈超音波検査を行うと甲状腺に腫瘍や嚢胞が高率にみつかります.悪性腫瘍の診療の一環としてのCTやFDG-PETによって甲状腺腫瘍を指摘されることもあり,血液検査では電解質などの一般検査異常から内分泌疾患が疑われることがあります.さらに甲状腺機能検査は多くの医療機関で当日結果がわかることから気軽に行われており,異常値を示すこともよくあります.このようなきっかけから,内分泌疾患に遭遇する機会はどんな内科医にも増えてきています.

 一方,最近では特有の症状の有無にかかわらず,高リスク群を対象に内分泌疾患を積極的にスクリーニングするという動きも活発になっています.高血圧患者の5~10%が原発性アルドステロン症であるという知見に基づき,低カリウム血症などの典型的症状の有無にかかわらず,高血圧患者から原発性アルドステロン症をスクリーニングするという新しい診療スタイルが,多くの医師に取り入れられています.また脂質異常症には甲状腺機能低下症が,骨粗鬆症や腎・尿管結石には原発性副甲状腺機能亢進症が潜んでいる可能性があります.

 内分泌疾患のなかにはホルモン産生下垂体腫瘍のように専門医療機関で集学的な診断,治療を必要とするものもありますし,外科的手術が必要な疾患も多いので,診断・治療のためにさまざまなレベルでの連携が必要になります.より良い連携のためには連携先の診療の現状を知ることが大切です.

 このような現状を踏まえ,今回の内分泌疾患の特集号では一般内科医がどのようなきっかけで内分泌疾患に遭遇するか,それを受けて専門医は内分泌疾患の診断をどのように確定し,治療しているかということが幅広く理解できる内容を目指しました.

 本特集が研修医,一般内科医,さらに専門医に広く読まれ,多くの内分泌疾患が早期から適切に診断・治療されるようになることを願っています.