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今月の主題

"がん診療"を内科医が担う時代

勝俣範之(日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科)


 "がん"の罹患数は年間50万人を超えるようになり,「2人に1人はがんに罹患し,3人に1人は,がんで死亡する」時代になりました.このように,がんはもはやcommon diseaseといってよい疾患であると思います.

 がん医療は永らく外科医がその診療の中心を担ってきましたが,早期発見・早期治療できるがんは一部のみであり,手術で治るがんもまた早期のがんのみです.これまで,がんは切れなければ治らない,あきらめるしかなかった病気でした.しかし,薬物療法により,再発を防ぐことによって治るがんが増え,また,再発しても,抗がん剤をうまく投与することによって,より長く共存することが可能になってきました.

 抗がん剤治療は,副作用の強い「化学療法」から,がん細胞の特異的な分子を標的とした,副作用の少ない「分子標的薬」の登場によって新たな時代を迎え,また,「腫瘍内科医」という,内科のなかの新たなサブスペシャリティが確立されてきています.緩和ケアも,従来の「入院型緩和ケア」から「在宅緩和ケア」にシフトしてきており,より患者のニーズに応じたきめ細かい緩和ケアの必要性が高まってきています.

 このように,がんという病気は,治療法が多様化し,専門性が高まっていく一方で,がんを語ることがもはやタブーでなくなり,社会全体,また地域のなかで,がん患者を支えていく必要が叫ばれ,がんとどうやってうまく付き合っていくかということが問われる時代となりました.そのようななかで,共に闘っていくパートナーとして,内科医は今後がんという病気と,大きくかかわっていく必要があり,わが国でも大きな「パラダイムシフト」を迎えていると思います.

 本号では,「腫瘍内科医」の役割を紹介するとともに,プライマリケア医,一般内科医が"がん"にどうかかわっていったらよいか,また,がんの社会学として,サバイバーシップや民間療法との付き合い方まで解説し,幅広くがん医療に関して,知識・理解を深めていただければと思っております.