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今月の主題

視ないで診る消化器疾患
考える内科医のアプローチ

上野文昭(大船中央病院)


 最新のテクノロジーが医療に導入されるにつれ,画像検査が有力な診断手段となりました.特に消化器領域では,従来の造影X線に加え超音波,CT,MR,そして内視鏡などの画像診断が必須というような趨勢です.これらの検査を行うためには的確な技術を有する消化器専門医・画像診断医や,設備の整った医療施設が必要です.また治療においても,画像形態を標的とした内視鏡やカテーテルによる低侵襲治療手技ができないとお手上げと思っている内科医も少なくないと思います.

 では消化器診療における内科医の役目はなくなってしまったのでしょうか? そんなことはあり得ません.海外では消化器診療の大部分を「いちいち画像を視なくたってちゃんと患者を診られる内科医」「刺したり切ったりしないけどきちんと治療できる内科医」が担っています.消化器専門医の登板機会は,診断や治療に本当に困ったときのコンサルテーションに限定されます.目で視えるものをみつけ,形のあるものを切ったり潰したりする,これは本質的に外科診療です.視えない病因・病態を考察し,それを正すべく適切な治療介入を選択する,これが本当の内科医の仕事なのです.

 もちろん画像診断や低侵襲治療手技に代表される最新のテクノロジーを否定するつもりはありません.でもその前に内科医ができること,内科医がしなければならないことがたくさんあります.大切なのは,地球上で最高のコンピュータである人間の頭脳を駆使して,効率のよい診療を行うことです.そのうえで最新技術の適応を考えながら正しく用いることが最良の消化器診療であると信じています.

 本号の特集では,優れた内科医であればここまで診ることができるという観点に立脚して,消化器症候や消化器疾患の診断・治療を考えてみました.短絡的な検査や侵襲的治療に終始するのではなく,もっと内科医の知恵が発揮できるようなアプローチを提供できることを期待しております.