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今月の主題

内科疾患の予防戦略

福原俊一(京都大学大学院医学研究科 医療疫学)


 時代は今,疑いなく予防である.「疾患の正確な診断と治療による疾病の克服」という従来のモデルから,「疾病の発生予防,疾病の進展予防,疾病との共存によるQOLの維持・改善」のモデルに移行しつつある.

 このような時代にあって,内科医は,患者あるいは住民と最初にコンタクトし,かつ最後まで責任をもって見届ける存在であることから,予防医療における役割はきわめて大きい.実際の調査データからも,市中病院の内科医が対応する患者のプロブレムの第1位は,「検診結果の異常」であることがわかっている.特に,現在の日本において,国家レベルで主要な疾病負担となっている糖尿病,心脳血管疾患,悪性腫瘍,腎疾患,精神疾患は,予防医療の主要な標的であり,これらのほとんどは内科医が対応しているプロブレムである.そのため,内科医が予防医療の中核を担うことに疑いの余地はない.

 以上のような趣旨で,本号では内科医が中心となって行う予防戦略について特集することとした.また,内科医による予防戦略においては,従来の臓器別subspecialtyアプローチを超えた分野横断的な発想,臨床疫学や医療経済など,新しい視点による予防方略の評価と戦略的な取り組みが求められる.本誌では過去にこのような視点から,2008年9月号(45巻9号)特集「multiple problemsの治療戦略」を企画したが,本特集においても,各執筆者にこのような視点を取り入れた執筆をお願いした.本誌読者である,第一線で予防実践に取り組まれている内科医の皆様にとって有用な情報となれば幸甚である.