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今月の主題

関節リウマチを疑ったら
診断・治療のUpdateと鑑別すべき膠原病

岸本暢将(聖路加国際病院アレルギー膠原病科(成人・小児))


 20年前の関節リウマチ(RA)治療の目標は,まず非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイドを十分使用しRAの症状を軽減させるというCareが中心であった.1990年台にアンカードラッグとしてメトトレキサート(MTX)が普及し,経口抗リウマチ薬(DMARDs)併用治療および生物学的製剤が登場するとともに,RAに対する治療戦略が変わり,その臨床的寛解が大きな治療目標となり,Cureも夢ではないかもしれない時代を迎えた.ところが"診断"というと,関節リウマチ長期罹患患者のデータを基に20年以上前に作られた1987年米国リウマチ学会RA分類基準を参考にするしかなかった.

 2010年,欧州リウマチ学会にて待ちに待ったRA新分類基準が23年ぶりに最終発表された.これは"骨びらん"が起こる前に早期治療を開始する目的で早期診断ができるよう工夫された基準である.ところがこの基準には"関節リウマチと類似する他疾患を除外する"という項目が含まれている.つまり,日常診療で遭遇する最も頻度の高い膠原病の一つである関節リウマチの診療を行っていくうえで,プライマリケア医が関節炎をきたす膠原病の鑑別に精通することが至上命題となったのである.

 今回の特集では,本邦のリウマチ膠原病診療の主役である第一線の臨床医に,プライマリケアの視点から,関節リウマチの新分類基準を含め,その早期診断,早期治療,さらには関節リウマチと鑑別が必要な疾患を中心に解説を行っていただいた.特に「関節リウマチと鑑別が必要な疾患とその特徴」では,多関節炎や多関節痛をきたすRAと鑑別が必要な疾患について,(1)典型的な症例提示,(2)その疾患を診断するときに特に注目する病歴聴取と身体診察のポイント,(3)その疾患を診断するときに必要な検査のポイント,(4)上記(2)および(3)をふまえてRAとの鑑別ポイント,(5)その疾患の治療について,(6)ピットフォール,(7)専門医へのコンサルトのタイミング,と実臨床ですぐに役立つ情報を盛り込んでいる.また,日常診療で診断に苦慮する不明熱や血管炎についても簡潔にまとめていただいた.まずは一読して概略をつかんでいただき,日々の診療においては必要に応じて各項目を再度確認していただきたい.

 最後に,今回の特集が『medicina』2008年1月号「プライマリケア医が主役 膠原病・関節リウマチの早期診断・早期治療」に引き続き,読者の方々の膠原病診療のお役に立てば幸いである.