今月の主題

浮腫をどう診るか

鍋島邦浩(藤田保健衛生大学腎内科)


 浮腫は,一般診療においてしばしば遭遇する,ありふれた症候の一つですが,その原因は多岐にわたります.浮腫はそれ自体が治療対象ではなく,その原疾患が治療対象となります.緊急性があるものとしては,特に肺水腫を伴うような重症心不全が代表的ですが,ほかに気道閉塞をきたす可能性のあるアナフィラキシーや血管浮腫,肺血栓塞栓症を合併しうる深部静脈血栓症,気道熱傷,壊死性筋膜炎,また,きわめて稀ですが,致命的な血液濃縮を伴いうるsystemic capillary leak syndromeなどが挙げられ,これらの病態は迅速な診断と処置を要する病態といえます.しかし多くの場合,浮腫自体に緊急性はなく,したがって,まず原因を鑑別することが重要です.

 そこで本特集では,主に浮腫の鑑別に焦点を合わせ,さまざまな診療料の疾患を幅広く網羅的に採り上げることを特色として企画しました.そのため,稀な疾患にも言及していただきました.また,治療に関しては,原因を想定あるいは診断することなしに安易に浮腫の対症療法が行われたりしていないか,という点も含めてポイントを絞って話題を提供していただきました.

 繰り返しになりますが,浮腫はあくまでも症候の一つであり,その診療は病態の把握に努め,可能な限り原疾患の治療を指向すべきです.本特集が臨床に携わっている先生方に少しでもお役に立てれば幸いです.