今月の主題

内科医のための がん診療Update

田村和夫(福岡大学腫瘍・感染症・内分泌内科)


 『medicina』では2005年11月号(42巻11号)で「内科医が知っておくべきがん治療」として総合的に基礎から臨床まで,各論では肺,消化器,乳がんなど主だった臓器がんを網羅して記載がなされている.本特集では,それ以後に開発あるいは普及してきた検査法や,がん薬物療法をまとめたい.

 「がん診療をめぐる日本の現状」では,2007年4月に施行されたがん対策基本法について,すべての医療者が知っておくべきものと考えその概要を記載いただくことにした.また,診療の背景となる疫学もおさえておきたい.

 「がんの特徴」では,発がんの要因と予防に関する介入研究の現状を,基礎的な腫瘍生物学では,最近次々と開発されている分子標的薬を理解するための腫瘍の生物学的な特性を,薬剤と関連をつけながらわかりやすく解説いただくことも考慮した.同時に,微生物が関与したがんについて最近のトピックとして,Helicobacter pylori菌とhuman papillomavirusを取り上げる.

 「がんに関する情報の取得と共有」では,最近特に問題にされている患者・医療者間のコミュニケーションスキル,EBMの情報採取について取り上げる.さらに,がん関連の遺伝子がわかるにつれ,日常診療のなかで,がんと遺伝に関する相談を受けることも多い.その現状と問題点を知っておくことは必要である.

 「がんの診断」では,学部教育のなかで,臨床腫瘍学の講義が行われるようになったことを受け,基本に戻って症状,身体診察や一般検査からどのくらい鑑別疾患を狭められるか,また,検診や細胞診,画像診断の重要性と限界を確認したい.なかでも乳がん検診ではマンモグラフィが推奨されているが,機器,読影者の問題を挙げ,今後の改善点を取り上げる.

 日常診療に有用かつ重要な疾患や病態として,oncology emergencyや疼痛管理は「支持療法」で,外科・放射線照射依頼の適応については「医療連携」で簡潔に示した.

 「治療」では,薬物療法に絞り,内科医が遭遇する機会の多いがんについて最近の進歩を概説していただく.内科医が,専門病院から継続で治療を依頼される可能性のある薬剤について,経口薬,ホルモン薬,分子標的薬について,作用,副作用,効果について記載いただいた.

 最後に「高齢者のがんの特徴と対処法」として,これまで正面から取り上げられることのなかった高齢者とがんについて,今後さらに高齢化が進むなかで避けて通れないテーマとして盛り込むことにした.

 以上,がん医療に関する現状と今後の展望が理解でき,少しでも日常診療の一助となれば幸いである.