今月の主題

プライマリケア医が主役
膠原病・関節リウマチの早期診断・早期治療

岡田 正人(聖路加国際病院アレルギー・膠原病科)


 自己免疫性多臓器慢性炎症性疾患の多くは「膠原病」として知られている。この膠原病という日本語はおそらく英語の「collagen vascular diseases」からと想像されるが,現在は英語圏の膠原病を専門とする医師の間では膠原病は「connective tissue diseases」と総称されている。今回の特集においても結合組織疾患という用語を使う案もあったのだが,あえて「膠原病」という言葉を残した。理由は読者にわかりやすいであろうということだけでなく,このconnective tissue diseasesという呼び方も一般に膠原病といわれる疾患群を正確には包括していないと考えたからである。

 さて,日本の膠原病診療の現状はどうであろうか。ヨーロッパでは一般に,Rheumatologistは関節リウマチと整形内科的な腱鞘炎,腰痛,関節痛を診る内科医のことを指し,SLE(全身性エリテマトーデス)などの膠原病はRheumatologistの専門分野とはみなされていない。米国のRheumatologistは整形内科的疾患とリウマチ・膠原病・血管炎などすべてを診療する。日本では膠原病を専門とする内科医が欧米に比して極端に少ない。これには,関節リウマチは整形外科医が診療してくれることも多く,SLEなどの比較的まれな疾患を主に診療する膠原病内科医は大都市周辺以外では必要性が乏しかったという日本固有の事情もあると想像する。

 現実的に,日本のリウマチ・膠原病内科医は整形内科的な疾患を診るトレーニングを受けておらず,また日本には欧米と比べ人口比で数倍以上の整形外科医が活躍しているためにその必要性にも切迫感がない。よって,これからも膠原病内科医は内科のサブスペシャリティのなかで最も数の少ない専門医の1つという状況は変わらないと考えられる。

 しかしながら,現実には膠原病患者はある一定の割合でみられ,早期診断・治療が重要なことは明らかである。また,慢性疾患であり定期的な注意深いフォローが必要になる。地理的な面と数少ない専門医の診療可能患者数の両方から考えると,ある程度膠原病診療に精通したプライマリケア医の役割は日本では欧米に比して非常に大きい。

 この特集は,本邦のリウマチ・膠原病診療の主役である第一線の臨床医が,効率的に膠原病の診断と治療を実践するための手引きとして企画された。日常診療の流れに沿った順序で内容が配置されているので,まずは一読し,概略をつかんでいただきたい。そして,日々の診療においては,必要に応じて各項目を再度繰っていただければ幸いである。