今月の主題

ウイルス肝炎 実地診療 A to Z

石川哲也(愛知医科大学消化器内科)


 本特集号は,研修医,若手医師,および肝臓を専門としない内科の先生方が,ウイルス肝炎患者の診療に際して知っておくべきことを網羅的に取り上げ,実地診療に役立てていただくことを目的として企画しました。

 “medicina”では2004年10月号で柴田実先生が「肝疾患の疑問に答える」という形で,肝疾患全般にわたってのわかりやすくユニークな特集号を企画されましたが,今回はそれから2年半ぶりの肝疾患の特集号となります。

 前回の特集号の発刊以来,B型肝炎に対する新しい核酸アナログ製剤の登場,C型肝炎に対するペグインターフェロン・リバビリン併用療法の普及など,ウイルス肝炎に対する治療は着実に進歩してきています。治療の選択肢の広がり,治療効果の向上にあわせて,治療に対する考え方も変わってきました。これを受けて,学会などを中心にして作成されるガイドラインも改訂が繰り返されており,治療法の進歩に追いつくのが大変な状況です。

 ある程度の規模で臓器別診療科体制がとれるような病院であれば,肝臓専門医,消化器専門医が常勤しており,治療法の変化にもリアルタイムで対応することが可能と思われます。しかし,実際には,多くの内科医は,開業,あるいは一般内科を標榜する勤務医として実地診療に携わっています。多忙な日常業務の中,内科全般にわたって知識をアップデートしていくことは大変な労力を要することです。一方で,インフォームド・コンセントの徹底が要求される現在の医療現場では,これらの進歩について理解し,患者さんへの適切な説明をすることが要求されます。肝臓専門医へのコンサルトが必要な状況を理解し,病診連携を上手に活用することも必要です。

 以上のことを鑑みて,今回はウイルス肝炎に絞っての特集としました。内容は,「A to Z」の副題より少し多い30項目にわたり,実地診療において必要な知識を,幅広く,効率よく得られるように工夫したつもりです。最新の進歩のみならず,ウイルス肝炎の自然史,治療に対する基本的な考え方,治療対象の選び方など,今後,治療法が進歩を遂げた場合でも応用可能な基本的な考え方についても取り上げてありますので,今までの知識の再確認にもお使いいただけると思います。執筆は,最前線で仕事をしておられる若手から中堅の先生方を中心にお願いしてあります。本特集号が,先生方のお手元で日常の実地診療のお役に立てますことを願ってやみません。