今月の主題アルコールと内科疾患北原 光夫(済生会向島病院) アルコールは神々と人間が一緒に住んでいたギリシャ神話の頃から存在していた。 天上の神々や地下の神々がオリュンポス主神の大広間で毎日,饗宴を催すときにはアンブロシア(神食)に添えて,ネクタル(神酒)が出された。 また,ゼウスの息子であるディオニュソス(バッコス=ローマ神話名)は酒の神であるのみならず,酒の社交性を示現し,文明の啓発者,平和の愛護者とも称された。何となく,アルコールの明るい面をだしている。 歌劇「椿姫」は悲劇であるが,乾杯の歌は明るく,楽しい。一方,わが国では「酒は涙か,ためいきか」や「悲しい酒」のように暗い面がつきまとう。 今回の特集「アルコールと内科疾患」は,アルコールのわれわれへの影響を多角的に捉えたものである。今まで扱われた特集はアルコールの問題を比較的限られた分野に絞ったものであったが,今回は内科的疾患を中心に,アルコールの依存を含めた特集である。したがって,この特集をみれば,アルコールが関与した状況への対応策が網羅されている。 「アルコールとヒトの歴史」のイントロダクションと,『アルコールの飲み方と生活』のセクションで,アルコールの基礎知識が得られるように工夫した。 アルコールは種々の臓器に慢性的に障害をきたすので,『アルコールによる臓器障害』として章立て,かなりのスペースを割いて解説がなされている。しかし,アルコールによる救急もよく遭遇することであり,『アルコールと救急』のセクションのなかで,急性アルコール中毒とケトアシドーシスを取り上げた。 『アルコールと代謝疾患』のセクションでは,アルコールがどのように,われわれの代謝に作用するのかを,糖と尿酸と脂肪の面において述べていただいた。また,薬物との関係については『アルコールと薬物』として離脱の治療,相互作用,向精神物質との作用の3つに絞ってみた。 内科医があまり関与できない『アルコール依存の対策』をエキスパートの方々にお願いした。 今回の特集号は著者の方々のおかけで,アルコールに関する問題に当たったときに,すぐに役立つように編集できたと信じている。 |