今月の主題

臨床で出遭う内分泌疾患


島津 章(国立病院機構京都医療センター臨床研究センター)


 内分泌疾患はともすれば稀な疾患と考えられがちですが,決して珍しい疾患ではありません。また,ごくありふれた疾患のなかに隠れていることもあります。しかし,患者さんの訴えがなければ診断されず,放置されたままになっていることが少なくありません。診断されても自覚症状に乏しいため治療を中断し,放置されることも多いようです。

 一般に内分泌疾患は患者さん自身が申告してくれることはなく,糖尿病や高脂血症のように検診などによって自動的に拾い上げられる機会も少ないのが現状です。日常診療の場において,問診,身体所見,一般検査成績から,診察にあたった医師自身が「気づくこと」が,内分泌疾患の診断契機になることが多いと思われます。

 本特集では,臨床の現場で比較的よく出遭う内分泌疾患について,病歴と身体所見のチェック,一般検査所見など実際の診療の流れに基づき,解説を加えていただきました。ごく軽微な異常を指摘され,半信半疑で受診する患者さんの不安を解消するため,また典型的な内分泌疾患の患者さんが長期間見逃されることが起きないよう,内分泌疾患診療のポイントをつかんでいただくことを期待しています。

 内分泌疾患はどうしても専門家がみるものと思われがちです。実際には日常診療の場で知らずに遭遇していることがよくあります。この特集を参考として,内分泌疾患に親しんでいただければ,企画したものの一人として大きな喜びであります。