●しりあす・とーく | |||||||
第20回テーマ
アメリカの医師研修から何を学ぶか?(後編)
(中編よりつづく) 早すぎる専門家志向への懸念大曲 最近,新聞などの報道で,医師が早期にスペシャリストになりたがる傾向が言われていますが,私もそれを感じることがあります。2年目の初期研修医が「感染症をやりたい」と見学に来ることもあり,かなり早いうちから専門家になりたがるようです。
なぜそこを心配するのかというと,感染症を専門とすることを志向する医師を教育する側からすれば,しっかりと内科の研修を行った人でないと,専門的な感染症診療はなかなか難しいと思うのです。初期研修の1期生が,いま3年目であっちこっちへ巣立っていったわけですが,彼らが2年なり,3年経ってどう育ってくるか。いくつかの心配もあります。その1つは,偏った科に流れて行ってしまうことですし,また,ごくごく早期から安易にスペシャリストを志向し,足腰の弱いドクターが育つことでもあります。そういう意味で,後期研修というのはそうとうしっかりしないと心配だということが,杞憂かもしれませんが,あります。しっかりとした後期研修のソフトを用意してあげる必要があると思います。 感染症を教える側からすると,小児科一般であるとか,内科一般をそれなりにやってきて,例えば10年目,15年目の外科の先生ともディスカッションできるというか,言い負けないぐらいのものが育っていないと,病院内で感染症の専門家・コンサルタントとしてやっていくのはきついと思います。はたしてそういうものができ上がってきているかどうか。 医師が自分のQOLを求める傾向は日米同じ![]() 日本では,初期研修義務化によって業務がきつい診療科に進むのを若い医師が忌避するようになったということは,そういった科の先生方にとっては当然嘆かわしい状況とは思います。一方研修医からすれば臨床医の現実の厳しさを,市中病院で見て,「医者というのは大変なんだ。こんなに大変だとは思わなかった」とやっと実感したのだと思います。医学生のときには想像だにできなかったことだと思います。それで一般にQOLが高いと言われている診療科に「逃げた」ということだと思います。 求められる優れたロールモデル金城 ただ,その厳しさのなかにも喜びをもって,「大変だけど,内科をやっていこう」と思うには,やはりロールモデルが必要ですよね。ロールモデルが生き生きと,仕事は忙しくて大変だけれども,その中で誇りと喜びをもって診療にあたっている姿を見るのと,見ないのとでは雲泥の差だと思います。指導医の先生が燃え尽きて悲観的でしかなかったら「ああ,絶対に自分は内科医にはならない」と逃げてしまうと思います。「大変そうだけど,あの先生カッコいいよなぁ」と思ってくれる,そんなロールモデルとなるには,現時点では指導医の負担が大きすぎると思います。
後期研修医がいかに内科医として育つか金城 今後の鍵は後期研修医が,いかに内科医として育つかですね。2年間の初期研修では,内科の教育としては不十分ですし……。白井 後期研修医がしっかりしてくると,指導医の先生も楽になるし,下の研修医も伸びてくるし。どっちが先かといわれるとわかりませんが,相乗効果があると思います。研修医が後期研修医あるいはスタッフを見て,「この道はおもしろそうだな」と思ってくれれば,ますます層が厚くなっていくのではないでしょうか。 屋根瓦とチーム医療白井 1人でできることは限られているし,専門分化していくのは仕方がないと思います。やることも,学ぶことも多いし,教科書のページ数はかつての2倍になったと言われています。そうすると,チーム医療が重要になってきます。そして,チーム医療をしようと思ったら共通言語が必要で,それを使ってお互いのコンセンサスの上にプレゼンができないといけません。(つづきは本誌をご覧ください)
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