●手を見て気づく内科疾患 | ||
第5回テーマ 慢性閉塞性肺疾患でばち状指を認めたら肺癌を疑う 松村正巳(金沢大学医学部付属病院 リウマチ・膠原病内科)
病歴:5カ月前から左胸部の鈍い痛みを感じていた.3カ月前からは膝,足関節炎が出現した.また,1時間持続する朝の手のこわばり感もある.1カ月前から関節リウマチとして加療されたが,症状が改善しないため受診した.過去6カ月間で,2kgの体重減少を認める.家族は2カ月前から指の形が変わってきたことに気づいている. タバコは1日15本を30年間吸っている. 身体所見:両手にばち指を認める(図1a). 胸部X線写真・胸部CT:左肺腫瘍を認めた. 診断:肺癌+肥大性骨関節症 左上葉切除が行われ,術後,徐々に関節炎,ばち指の改善を認めた. 術後42日目:ばち指の改善を認める(図1b). 以上の経過は肥大性骨関節症に一致します1).慢性多発性関節炎の鑑別診断の一つです.肥大性骨関節症は,ばち指を特徴とし,進展した段階では長管骨の骨膜増殖,滑液滲出が起こります.ばち指では爪と爪郭の角度が変わってきます.左右の指先を重ねたときに,正常では左右の爪と爪郭によりダイアモンド型の隙間ができますが,ばち指では形成されません.これをシャムロス徴候(Schamroth’s sign)といいます2). 肥大性骨関節症は小児期から認められる原発性のものと,二次性のものがあります.二次性のものでは,胸腔内の悪性腫瘍,化膿性肺疾患に伴い起こります. 以下にローレンス・ティアニー先生から教わったパール(Pearl)を記載します. 「慢性閉塞性肺疾患の患者でばち状指が認められたら,胸部CTスキャンを撮りなさい.肺癌の可能性がある.」 診断の基本は,病歴,正確な身体診察です. (画像は本誌をご覧ください) 文献
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