HOME雑 誌medicina誌面サンプル 46巻4号(2009年4月号) > 連載●手を見て気づく内科疾患
●手を見て気づく内科疾患

第4回テーマ

爪上皮出血点,レイノー現象を訴える患者では
爪の生え際を観察する

松村正巳(金沢大学医学部付属病院 リウマチ・膠原病内科)


患者:57歳,女性
病歴:4年前から冬に水仕事をすると指先が白くなることに気づいていた.温めると紫色,赤色になって元に戻る.最近,指が白くなる頻度が多くなってきた.
身体所見:指は全体に腫脹しており皮膚はやや固い(図1).さらに,爪上皮出血点(nail fold bleeding:NFB),爪上皮の延長を認める(図2).

図1 指は全体に腫脹し,皮膚はやや硬い 図2 左第4指に爪上皮出血点,爪小皮延長を認める

 

診断:限局型全身性強皮症(limited cutaneous systemic sclerosis)

図3 爪上皮出血点(黒矢印),爪郭部ループ状血管拡張(赤矢印).ワセリンを塗布し観察した
寒冷刺激で指が白くなるのはレイノー現象(Raynaud’s phenomenon)です.典型的には白,紫,赤と三相性の色調変化をきたします.レイノー現象をきたす膠原病としては,強皮症,全身性エリテマトーデス,関節リウマチ,混合性結合組織病,皮膚筋炎,多発筋炎があげられます.

爪上皮出血点は,強皮症,混合性結合組織病患者の70~80%に認めます.第4指に最も多く見つかります1).健常人でも3%に認めるとされています.2本以上の指に爪上皮出血点が認められたときには,強皮症,混合性結合組織病に対する感度60%,特異度99%とされています.

また,爪郭部ループ状血管が拡張していたり,ねじれていたり,途絶している所見も観察されます.図3は爪上皮出血点,爪郭部ループ状血管が拡張している所見です.

レイノー現象を訴える患者では爪の生え際をよく観察します.爪上皮出血点は注意深く観察しないと見逃します.ルーペを用いることをお勧めします.爪郭部ループ状血管の拡張はワセリンを少量塗布すると観察しやすくなります.

(つづきは本誌をご覧ください)

文献
1) 竹原和彦.早期診断.よくわかる強皮症のすべて,pp81, 永井書店,大阪,2004