●東大病院内科研修医セミナー | ||
第4回テーマ
■CASE1【症例】 74歳男性。【主訴】 血圧が高い。 【現病歴】 生来,血圧や腎機能は正常であったが,2003年3月に腎機能障害〔血清クレアチニン(Cre)1.8mg/dl前後〕を指摘された。その約半年後に無症状ながら血圧が170/110mmHgと上昇し,カルシウム拮抗薬を服用したが改善なく,アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を併用したところ,血圧130~150/70~90mmHg程度となったが,BUN 33mg/dl,Cre 2.3mg/dlと軽度上昇した。経過および蛋白尿が少ないことから,腎血管性高血圧を疑い,2004年2月MRアンギオグラフィ(MRA)を施行,両側腎動脈の起始部から1cmのところに特に右に強い狭窄を認め(図1),ARBを末梢α受容体遮断薬(αB)に変更後,当院入院となった。 【生活歴】 喫煙,飲酒なし。 【家族歴】 高血圧・脳出血・腎障害。 【身体所見】 身長:156.4cm,体重:57.2kg,BMI:23.4,血圧:138/78mmHg左右差なし(αB服用下),頭頸部・腹部・四肢末梢に異常なし。心肺雑音なし。血管雑音は右頸部に軽度認めるのみ(腹部・鼠径部には聴取せず)。末梢動脈の触知はやや不良も可能。 【検査所見】 蛋白・肝機能・電解質正常,BUN34.3mg/dl,Cre 2.1mg/dl,Ccr 34.5ml/min,尿蛋白(±),尿沈渣正常,TC 138mg/dl,HDL-C 32.3mg/dl,中性脂肪 145mg/dl,血漿レニン活性 1.4ng/ml/hr(正常 0.2~2.7),アルドステロン15.5ng/dl(正常 2~13)。胸腹部X線;正常(心拡大なし),心電図・心エコー;正常(心肥大・虚血所見なし),腎エコー;軽度の両腎萎縮,resistive index正常。腹部大動脈からの分岐部は追えず。 【入院後経過】 臨床経過およびMRAの所見から,高度の腎動脈狭窄を疑ったが,血管造影は腎障害悪化のリスクを考慮して行わず,99mTc-MAG3によるcaptopril負荷レノグラムを施行した(図2)。その結果,右腎に明らかな造影の遅延を認め,右腎の腎血管狭窄症と診断した。腎機能低下はあるが中等度で腎萎縮も軽度であり,腎機能改善効果と血圧コントロールの改善を狙い,右腎動脈起始部の狭窄に対し,バルーン拡張とステント留置を行った。狭窄は完全に解除され,血圧コントロールはごく少量のαBのみで正常範囲内にコントロール可能となったが,腎機能は改善せずCreで一時2.7mg/dlまで上昇し,その後2.4mg/dlで安定化した。
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