第16回[呼吸器内科編]
代表的な呼吸器症状への対応を学ぼう!
野村征太郎・冨島裕・仁多寅彦・西村直樹・蝶名林直彦
(聖路加国際病院呼吸器内科)
呼吸器症状への対応 まずここを押さえよう
- 生死にかかわる疾患であることも多い! まずは緊急性をしっかりと判断しよう!
- 症状を引き起こしている病態を常に把握するよう努力しよう!
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指導医 今回は呼吸器疾患における代表的な4つの症状(① 呼吸困難,② 咳,③ 胸痛,④ 血痰)からの切り口で,患者へのアプローチを考えてみましょう.
■症例1
35本×40年の喫煙歴のある66歳男性
指導医 まずは,呼吸困難の症例です.この患者は最近階段昇降時に息切れを自覚するようになり,風邪をひくと痰が切れずに長引くことが多いようです.
この時点で何を考えますか.
研修医A 慢性的な経過で呼吸困難感が増悪していることから,慢性閉塞性肺疾患(COPD)や心不全などの存在を考えます.
指導医 そうですね.特に喫煙歴がある患者ではCOPDの存在は絶対に忘れてはいけないね.
ところで,呼吸困難の患者へのアプローチにあたって,問診で聞き落としてはならないこととしては,①呼吸困難の程度をHugh‐Jones分類で表すとどうなるか,②呼吸困難が労作時のみか安静時にもあるのか,③発症のしかたが突然か徐々にか,④随伴症状はあるか,などがあります.それらから考えると,図1のようなアプローチが考えられます.そして検査としては,胸部X線写真・心電図,必要があれば動脈血液ガス検査が有効です.この段階で,胸部X線写真は肺野のみならず心陰影や気管内陰影,気胸などにも留意すべきですし,心電図で不整脈,心筋・心膜異常などを検出することもできます.

研修医 CTも必要なのではないでしょうか.
指導医 この段階では必ずしもCTが必要ではありません.病歴と簡単な検査から診断への糸口を見つけていくことが大切です.
先ほどの患者に戻りますが,実際にこの患者は口すぼめ呼吸をしていて呼吸機能検査で1秒率が33%と著明に低下しており,CTで肺の著明な気腫性変化を認め,COPDの診断となりました.
COPDを疑う胸部X線写真の特徴は,横隔膜低位,過膨張所見,胸骨後腔・心後腔の開大などがあり,図2のようなものが一般的です.

診断
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
症例1から学ぼう
- 喫煙歴のある呼吸困難患者においては,COPDの存在は常に検討しなくてはいけない.
- 呼吸困難に対するアプローチは,病歴と簡単な検査から診断への糸口を見つけていくことが大切である.
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(つづきは本誌をご覧ください)
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