第15回[消化器内科編]
血便から鑑別疾患を考えよう
鈴木祥子・藤谷志野(聖路加国際病院内科)
飯塚雄介(聖路加国際病院消化器内科)
血便の診断 まずここを押さえよう
- 便の回数,性状を問診し,どのような血便なのか実際に直腸診をして確認をすることで,出血部位を推定する.
- 随伴症状(腹痛,発熱,下痢の有無)の確認,消化管出血の既往歴,生活歴(渡航歴や食べ物など),薬剤服用歴,基礎疾患,性生活歴,月経との関連などの問診から原因疾患を推定する.
- 血便の原因には,腹部大動脈破裂の穿破や上腸間膜動脈閉塞症のような緊急性の高い疾患も含まれる.
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指導医 今回は,血便から鑑別疾患を考えましょう.血便は,問診および便の性状,随伴症状から原因疾患を推定することが重要です.そこで,「随伴症状のない血便」(症例1,2),「強い腹痛を伴う血便」(症例3,4),「慢性的な血便」(症例5,6),「入院患者で注意すべき血便」(症例7)について症例を提示し,CTおよび内視鏡写真をみながら解説します.
■症例1
突然の鮮血便を認め来院した68歳男性
指導医 最初の症例は,特に既往のない男性です.来院当日に突然,便器一杯の鮮血便を3回認め,来院しました.腹痛や発熱はありません.腹部造影CT(図1)と大腸内視鏡写真(図2)を示します.どのような疾患か思い当たるものはありますか.

研修医A 発症時に腹痛がないこと,CTでは大腸憩室と造影剤の漏出像がみられることから,憩室出血を考えます.
指導医 さすが,目のつけどころがよいですね.では,この症例と同様の患者が外来にきたら,緊急内視鏡の施行を考えますか.
研修医B 便器一杯の鮮血便という表現とCTではっきりと造影剤漏出が確認されることから,出血量は比較的多いと考えます.緊急ですべきだと思います.
指導医 その通りです.
症例1から学ぼう
- 憩室出血とは,中高年者の腹痛を伴わない突然の下血が典型的である.時に大量下血となり,出血性ショックを起こす.
- 腹部造影CTが憩室の有無の確認と出血部位の推定に有用である.
- 出血量が多い場合には,緊急内視鏡の適応である.
- 内視鏡的止血が困難な場合には,血管塞栓術や外科的手術の検討が必要である.
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(つづきは本誌をご覧ください)
文献
1)消化管の出血性疾患 2005,胃と腸 40(増刊号),2005 2)菅野健太郎,上西紀夫,井廻道夫:消化器疾患最新の治療2007-2008,南江堂,2007
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